研究概要 |
申請者は研究計画に記したように PINK1 の基質を探索し,PINK1 自身がリン酸化をされていること,言い換えると「PINK1 自身が基質である」可能性を見出した.さらにこの PINK1 の自己リン酸化に関する詳細な解析を行い、2012年に原著論文として Nat Comm 誌に発表した。申請者は更に Parkin の基質を探索する目的でミトコンドリアの膜電位を失わせた時に Parkin と結合する因子のスクリーニングを行い,VDAC, Tom70, NME2, MitoNEET, HKI を同定した。これらの5つの因子の細胞内局在を調べたところ、NME2 は Cytosolic な因子であったので、解析対象から外した。次に培養細胞において VDAC, Tom70, MitoNEET, HKI を Parkin と共過剰発現し、CCCP 処理を行ったところ、VDAC, MitoNEET, HKI についてはユビキチン化に由来すると思われるラダー状の分子量の増加が観察される一方、Tom70 ではこの putative ユビキチン化シグナルは顕著ではなく、Tom70 を解析対象から外した。さらに Dr. Mizushima や Dr. Chan など他グループの網羅的な解析と比較検討した結果、HKI に特に着目して、集中して解析を行うことにした。その結果、HKI が確かに Parkin によってユビキチン化されること、遺伝性パーキンソン病患者由来の Parkin 変異体は HKI をユビキチン化できないこと、HKI はミトコンドリアに局在すること、内在性レベルの Parkin も HKI をユビキチン化できることなどを明らかにした。これら一連の結果は、HKI が Parkin の新規基質であることを強く示唆しており、原著論文にまとめることができた (BBRC 2012)。
|