研究概要 |
従来の生物学では多くの場合にマクロスケールのパラメータとして捉えられる(1)「仕事(力)」と(2)「熱(温度)」という2つのエネルギー量を、メゾスケールで扱える技術を開発し、新規で生物学的に重要な事象の発見を目的とする。2013年度は、(1)昨年度までに準備を進めていた論文について、追加の実験を行った。また(2)昨年度までに改良に成功していたナノ温度計を培養細胞HeLaへ応用した。HeLa細胞にはふりかけるだけで自発的にとりこまれること、エンドサイトーシスで取り込まれた後は酸性オルガネラであるエンドソームに存在すること、エンドソーム内と細胞外とに温度差の無いことが確認された。さらに一個の細胞からの発熱を検出する試みに成功した。細胞内Ca2+濃度を強制的に急上昇させると、細胞内の各部位で温度の上昇が観察された。温度上昇の時間変化は、部位毎に異なっていた。また細胞全体のCa2+濃度上昇と温度変化とを比較すると、正の相関が見られた。これは個々で見られた発熱現象の熱源が、Ca2+によって活性化される分子または機構であることを示唆している(Takei, Y., Arai, S., Murata, A, Takabayashi, M., Oyama, K., Ishiwata, S., Takeoka, S. and Suzuki, M. , ACS Nano, 8(1), 198-206, 2014)。
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