研究課題/領域番号 |
23687022
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
木村 哲就 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (70506906)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロ流体デバイス / 蛍光顕微観察 / フォールディング / 二重蛍光標識 |
研究概要 |
分子の自己組織化あるいは基質結合の分子機構を明らかにするためには、反応に寄与する分子のコンフォメーション変化を実時間観察することが重要である。そのために、化学反応を開始する方法として、溶液の混合や光照射による手法が開発されてきた。特に溶液の混合によって反応を開始する方法は種々の反応場を提供でき、また様々な測定法と用意に組み合わせることが可能であるという特長がある。しかし、従来の方法では大量の試料を必要とするために対象にできる生体試料が限定されており、時間分解能も数ミリ秒程度が限界である。本申請研究では新規のマイクロ流体連続フローミキサーを開発し、顕微分光法と組み合わせることによって、試料の消費量を抑制し、時間分解能を向上させた新規の計測系を構築することを試みた。 平成23年度にはミキサーの開発、及び顕微システムを用いた蛍光強度測定・蛍光寿命測定系の構築を行い、フォトリソグラフィー技術とPDMS成型を行うことで、20μm幅の流路を持つマイクロ流体ミキサーを作製した。このミキサーをOlympus製倒立型蛍光顕微鏡に組み込み、3μmに絞られる蛍光試料を含んだ細い流束が発する蛍光の輝線を捉えることに成功した。平成24年度にはミキサー特性の更なる改善を目指して、流路成型に工夫をこらし、より流路幅の細いミキサーと、5本の流路から構成される新規のデザインをもつミキサーの2種類を作製した。これらの混合効率の評価を蛍光強度変化および時間相関蛍光法を用いて行った結果、流路幅の細いミキサーは試料消費の更なる抑制に、5本の流路をもつミキサーは時間原点の導出がより正確に行えることがわかった。また、レーザーとピンホールを用いた共焦点系を用い、より高い時間分解能での計測が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体分子反応の計測系の構築・改善を順調に行えている。また、計測に資する試料の調製にも平成23年度に成功していることから、当初の予定通り計画が進展しているものと考える。 特に平成24年度に構築されたレーザーとピンホールを用いた共焦点系は、平成23年度に研究を開始して以来、研究代表者が用いてきたたCCDによる蛍光強度検出系よりも高い空間分解能を実現できる系である。そのため、本申請研究ではより高い時間分解能を達成することが可能になり、より正確な蛍光強度計測が可能になっている。また、検出には蛍光強度計測のほかに、蛍光寿命測定あるいは蛍光相関分光法を用いることで、蛋白質分子に導入した蛍光供与体・受容体間距離などの構造情報あるいは動的性質をそれぞれ明らかにすることが可能にできた。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は平成25年度より、研究実施場所を分子科学研究所から理化学研究所 放射光科学総合研究センターへ移し、引き続き本研究課題を実施する。そのため、検出系の再セットアップが必要になるが、これまでの技術を活かしできる限り早く検出系の再構築を進める予定である。 計測対象とする膜タンパク質等については準備が整っており、検出系の構築が済み次第、計測を実施する。これによって開発したマイクロ流体デバイスの有用性を確認する。さらには理化学研究所の所属研究室で研究が精力的に遂行されている金属を含んだ膜タンパク質に関する研究へと展開していく予定である。 また、分子科学研究所で遂行していた赤外分光計測による膜タンパク質の微量計測についても結果をまとめ、できる限り早く論文にする。
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