細胞分化における遺伝子発現の調節には細胞系列特異的な転写因子が関与していると考えられており、このうち赤血球の分化においては、GATA-1転写因子が重要な役割を果たしている。GATA-1は、Scl/TAL1、LMO2、LDB1、ETO2などの転写因子もしくは共役因子と複合体を形成していることが明らかとなっており、これらの因子がGATA-1による遺伝子発現制御に影響を及ぼしていることが予想される。本研究においては、複合体の構成因子のうち転写抑制因子として知られているETO2に着目し、ヒト赤芽球分化における赤血球関連遺伝子のヒストンアセチル化・メチル化を介したエピジェネティックな発現調節において、ETO2がいかに関与するか明らかとすべく本研究を計画した。 具体的にはヒトCD34陽性細胞からの赤芽球分化系を用い、ETO2のノックダウンを行った後の遺伝子発現変化についてのマイクロアレイ解析とともに、免疫沈降シーケンス法を施行する予定である。平成23年度は、まず赤芽球系細胞であるK562細胞におけるETO2の意義について解析を行った。K562細胞におけるETO2強制発現及びクロマチン免疫沈降法を通じて、ETO2がグロビン遺伝子をはじめとした赤血球特異的遺伝子を直接制御していることを明らかとした。さらに、今年度はCD34陽性細胞由来の赤芽球分化系においてETO2のノックダウンを行うことにより、同様にグロビン遺伝子の発現上昇を認め、ここまでの成果を雑誌へ報告した。今後これらの実験系を用いて、変動遺伝子群のヒストン修飾変化について解析を行っていく。
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