研究課題
若手研究(A)
平成23年度は1)NMDが直接制御する細胞内在性基質の網羅的同定とその具体的な役割の解析2)NMD制御分子の新規相互作用分子の解析を通じたNMDと細胞ストレス応答の分子機構の解析について研究を行い、特に2)について、研究成果を3本の原著論文と1本のレビューとして発表した。具体的には(1)IR、UV、H2O2、NaAs処理依存的に細胞質に形成されるストレスグラニュール(SG)にNMD制御分子SMG-1が局在することを明らかにした。さらに、SMG-1およびその酵素活性はH2O2処理によるSG形成に必須であることを明らかにした。一方で既知のSMG-1の基質であるUpf1のリン酸化はSGでは観察されなかった。このことから、SMG-1依存的なSG形成には未知の基質に依存した機構が存在する可能性が示唆される。(2)Hsp90の阻害によりDNAダメージに対する感受性が更新することがわかっていたが、そのメカニズムの理解は完全には進んでいない。Hsp90がDNAダメージ応答の中心的な制御因子であるPIKKファミリータンパク質全体を制御する分子であることを明らかとした。さらにHsp90が既知のPIKKファミリー全体を制御する分子複合体であるRUVBL1/2複合体とTel2複合体と結合することを示した。(3)SMG-1が細胞内でUpf1のN末端側のトレオニン28(T28>をリン酸化することを新たに同定した。リン酸化T28にはSMG-6がその14-3-3様領域を介して結合すことを示した。一方で、同じく14-3-3様領域を有するNMD制御因子SMG-5:SMG-7複合体はUpf1のC末端側のセリン1096にSMG-1によるリン酸化依存的に結合することを明らかにした。さらに、これらのリン酸化依存的結合はNMDに必須であることを証明した。また、SMG-5:SMG-7複合体の結合がリボソーム解離とUpf1のmRNAからの解離に関わること、SMG-6の結合がUpf1のmRNAからの解離に関わることを示唆する結果を示した。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、NMD制御分子の新規相互作用分子の解析を通じたNMDと細胞ストレス応答の分子機構の解析をまとめ、2つの研究論文と1つの総説を発表した。また、既知のNMD制御分子がどのように異常終止コドン認識後のNMDを制御するかに関わる論文を発表した。研究計画にある内容についても順調に進んでいる。
NMDの阻害によるガン細胞の増殖阻害について、低分子量化合物の探索を行うことは、研究成果の社会還元を考える上で重要である。当初の研究計画にある研究を進めるとともに、低分子量化合物の探索のための、アッセイ系の構築とそれを用いたNMD阻害剤スクリーニングを行っていく。
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