研究課題
1)NMDが直接制御する細胞内在性基質の網羅的同定とその具体的な役割の解析2) NMD制御分子の新規相互作用分子の解析を通じたNMDと細胞ストレス応答の分子機構の解析について研究を行い、特に2)について、研究成果を2本の原著論文として発表した。具体的には、①いくつかのNMD制御分子の発現抑制が、細胞増殖を阻害することを見いだしていた。これは、NMD阻害による遺伝性疾患治療の可能性を考えた際問題となる。そこで、既知のNMD制御分子15種について発現抑制によるNMD阻害と細胞障害活性の解析を行った。その結果、解析したすべての分子のknockdownで、異常終止コドンを生じる2種の異なる遺伝性疾患患者由来細胞において、疾患原因遺伝子由来産物の蓄積(NMDの阻害)が観察された。さらに、SMG-8を除くすべての既知NMD制御分子の発現抑制は、強い細胞障害活性を認めた。これらの結果はSMG-8が最も優れたNMD阻害剤開発ターゲットであることを示している。②小胞体ストレス時に、upstream open reading frame(uORF)による発現制御を受ける転写因子であるATF4が翻訳されることが知られている。uORFはNMDを誘導することから、小胞体ストレスとNMDの関わりについて解析を行った。その結果、小胞体ストレス時に、ジェネラルな翻訳が抑制されることによりUpf1のリン酸化とNMDが阻害されることが明らかとなった。一方で、通常の培養条件では、NMD阻害によって、ATF4 mRNAの発現が上昇するが、タンパク質発現は影響を受けないことも明らかとなった。このことは、ATF4発現が、mRNA安定性制御よりもuORF翻訳制御によるものであることを示している。これらの解析に加え、NMD活性を測定するハイスループットアッセイシステムの改良にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、既知のNMD制御分子の中で遺伝性疾患治療ターゲットとなる分子の同定と細胞ストレス応答とNMDとの関わりについての解析をまとめ、2つの研究論文を発表した。また、最終年度に向け、得られたデータの論文化に向けた研究を進めると共に、新たな展開につながる、NMD制御分子の新規結合分子の同定も進めている。さらに、ハイスループットアッセイ系の構築についても順調に推移している。一方で、NMDが直接制御する細胞内在性基質の網羅的同定とその具体的な役割の解析については、他の解析が特に順調に進んだため、解析速度を低下させた。
平成26年度は最終年度であるため、解析結果の論文化を積極的に進める。さらに、順調に推移している研究を積極的に進めるとともに、新規にNMD制御分子結合蛋白質のNMDへの関わりを解析すると共に、新規結合分子の既知機能へのNMD制御因子の関わりについても解析を進める。また、NMDに加え、異常終止コドンreadthroughについても、ハイスループットアッセイ系の構築を進める。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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