研究課題/領域番号 |
23687027
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 美由紀 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (70321768)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 受精 / オートファジー / ミトコンドリア / 母性遺伝 / タンパク質分解 / オルガネラ / エンドサイトーシス |
研究概要 |
卵母細胞は受精によってすべての細胞に分化しうる全能性を獲得し接合子へと変化する.申請者らは線虫C.elegansを用いて,受精前後の時期には細胞内膜系がダイナミックに変化することを見出し,その制御や生理的意義に注目して解析を行っている.まず,受精直後に侵入した精子の近傍に局所的なオートファジーが誘導されることを見出し,このオートファジーによって精子に由来するミトコンドリアなどの父性オルガネラが選択的に分解されることを明らかにしてきた.また,このオートファジーによる父性ミトコンドリアの分解はミトコンドリアDNAの母性遺伝を成立させるために必要であることも示した.さらに,父性ミトコンドリアを選択的に認識するメカニズムを明らかにするため,網羅的RNAiによって父性ミトコンドリアの分解に異常を示すクローンの探索を進めている.現在数百個の遺伝子をスクリーニングし候補因子を得るとともに,さらにスクリーニングを進めている.また,時期特異的にオートファジーを誘導するシグナル系を明らかにするため,網羅的RNAiによって受精卵におけるオートファジーの誘導に異常を示すクローンの探索も行っている. 一方,受精直後にはオートファジーだけでなく,エンドサイトーシスを介したリソソームへの輸送も一過的に活性化され,卵母細胞に由来する膜タンパク質が選択的に分解される.この過程に関わる因子を探索したところ,ユビキン化を制御するユビキチン結合酵素(E2)のひとつを同定した.このE2の変異体では,受精卵において本来リソソームへ送られ分解される基質がエンドソーム経路を安定的にリサイクリングしていた.一方,受精前の卵母細胞には特に異常が見られなかった.従って,このE2を含むユビキチン化のシステムが受精後にのみ活性化するシグナル経路が存在すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受精卵におけるオートファジーについては,関連する網羅的RNAiスクリーニングを順調に進めており,新たな因子の同定が期待できる.受精後に誘導されるエンドサイトーシスについては特定のE2を介したユビキチン化の制御が関与することを明らかにし,ユビキチン化の制御が輸送の方向性を決定していることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
網羅的RNAiスクリーニングをさらに進め,平行して個別の候補因子の詳細な検討も行う.エンドサイトーシスについては基質特異性を決定すると予想されるE3(ユビキチンリガーゼ)の同定を進め,シグナル経路による時期特異的活性化機構の解明を目指す.
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