研究課題/領域番号 |
23687030
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花房 洋 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00345844)
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キーワード | LRRK1 / EGFR / CLIP170 / endosome |
研究概要 |
過剰なEGFRシグナルや不適切に活性化されたEGFRシグナルは、細胞の癌化を引き起こすことが知られている。我々はROCOキナーゼファミリーLRRK1が、EGFRの細胞内トラフィックを制御することで、EGFRシグナルを時空間的に制御することを見出してきた。LRRK1はRas様GTPaseドメインとMAPKKK様キナーゼドメインを持つユニークな分子であり、近年ファミリー分子LRRK2がパーキンソン病原因遺伝子(Park8)であることが明らかとなり、臨床的にも注目を集めている。しかしLRRK1及びLRRK2の機能に関してはほとんど明らかになっていなかった。本研究課題では、(i)LRRK1キナーゼの基質の探索、(ii)LRRK1によるEGFR輸送(ダイニンモーター蛋白質に依存)の制御機構の解明、(iii)細胞恒常性維持におけるEGFR細胞内トラフィックの重要性の解明、の3点について解析を進め、LRRK1によるEGFR細胞内トラフィック制御機構の分子機構解明を目的としている。昨年度からの研究により(i)に関し、微小管プラス端結合タンパク質CLIP-170がLRRK1と相互作用し、LRRK1によってリン酸化されることを明らかにした。GST-CLIP170リコンビナント蛋白質を用いたin vitro kinase assay及び質量分析による解析から、LRRK1によるリン酸化部位の同定を行った。(ii)に関し、LRRK1によるCLIP170のリン酸化部位の変異体が、EGFRを含むエンドソームの輸送に影響を与えることを明らかにした。(iii)に関しては、LRRK1をノックダウンするとAktの活性化が持続することを見出した。現在その意義について解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LRRK1キナーゼの基質の探索に関し、CLIP170を同定した。さらにリン酸化部位を同定し、リン酸化部位に変異を導入することで、LRRK1によるリン酸化の意義を明らかにした。 LRRK1と相互作用する分子として同定していたNudCなどの役割について新たな知見を得た。NudCはLRRK1とともに細胞周期M期に中心体で重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。またLRRK1が中心体に局在し、細胞分裂期に活性化していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた知見をもとに研究計画に沿って研究を遂行する。特にLRRK1がCLIP170をリン酸化することで、いかにEGFR細胞内輸送開始の制御に機能しているのか、タイムラプス解析を行い解析していく。 また細胞周期におけるLRRK1の役割については、LRRK1のCLIP170以外の基質が関与していないか検討する。特に中心体成熟や、スピンドル配向制御における機能について解析を行う。 LRRRK1は中心体で活性化しているが、中心体への局在化機構については明らかになっていない。そこで、LRRK1と相互作用する分子の中に、LRRK1の中心体局在に重要な分子がないか検討する。さらに、LRRK1の中心体局在がどのよな意味を持つか解析を進める。 今年度中には論文として発表できるよう研究を進める。
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