細胞は周りの環境から様々な情報を受け取り、分化/増殖などの応答を行っている。これまでの研究から過剰なEGFRシグナルは細胞増殖を不適切に引き起こし、細胞の癌化につながることが明らかとなってきている。我々はROCOファミリーキナーゼLRRK1が、活性化したEGFRの細胞内トラフィックを制御することで、EGFRシグナルを時間的にも空間的にも制御していることを明らかにしてきた。昨年度までの解析から、LRRK1は(1)アダプター分子Grb2を介しEGFRと複合体を形成すること、(2)LRRK1はキナーゼ活性依存的にEGFRの微小管上の輸送を制御し、EGFRの早期エンドソームから後期エンドソームへの移行を制御すること、(3)LRRK1はESCRT-0複合体構成因子STAM1と結合し、EGFRのエンドソーム内腔への取り込みを制御すること、を明らかにしてきた。またLRRK1がキナーゼ活性依存的にEGFR細胞内トラフィックを制御することから、LRRK1の基質を探索したところ、微小管プラス端結合因子CLIP-170を同定した。質量分析によりリン酸化部位の同定を進めたところ、LRRK1はCLIP-170のC末zinc knuckleドメインに存在するスレオニンをリン酸化することを見出した。LRRK1は、CLIP-170をリン酸化することでCLIP-170とp150 Gluedとの結合を促進し、ダイニン/ダイナクチン複合体の微小管プラス端へ局在をエンハンスすることが明らかとなった。またこの制御は、EGFRの微小管上へのローディング、微小管プラス端からマイナス端への輸送開始に重要であることも明らかとなった。以上の結果から、LRRK1はCLIP-170をリン酸化することで、EGFRを含むエンドソームのダイニン依存的な輸送を制御していることが明らかとなった。
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