研究課題/領域番号 |
23687031
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
西村 隆史 独立行政法人理化学研究所, 成長シグナル研究チーム, チームリーダー (90568099)
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キーワード | アミノ酸シグナル / シグナル伝達 / 成長制御 |
研究概要 |
蛋白質の生合成は、細胞が生きていく上で必要不可欠なプロセスである。アミノ酸は、蛋白質やペプチドを合成するための、重要な栄養素である。一方、アミノ酸は受動的なマテリアルとして要求されるだけではなく、能動的なシグナルとしても働きうる。酵母からヒトまで進化的に保存されたTOR複合体は、アミノ酸シグナルに応答し、蛋白質生合成を調節する。しかしながら、アミノ酸シグナルの実体は、未だに未解明である。本研究は、アミノ酸シグナル応答という普遍的な分子基盤の一端を理解することを目的とする。 本研究提案では、生化学的手法と遺伝学的手法を組み合わせて研究を展開する。平成23年度の研究として、以下の2点を計画した。1:生化学的な手法により新規アミノ酸シグナル関連蛋白質の同定を行う。2:二次スクリーニングとして、ショウジョウバエを用いた遺伝学的な表現型解析を行う。 当初の予定通り、アミノ酸シグナルに関与する分子RagA/Cの新規結合蛋白質を生化学的手法により同定した。さらに、哺乳類培養細胞を用いた実験およびショウジョウバエを用いた遺伝学的解析により、同定した蛋白質の機能解析を進めている。また、ショウジョウバエにおいて、栄養摂取により生産され個体成長を促すインスリン様成長因子に着目し、その発現機構を明らかにした(岡本ら、PNAS、2012)。さらに、ショウジョウバエのインスリン様成長因子の発現に関わる転写因子は、哺乳類インスリンの発現にも関与していることを明らかにした。今後は、栄養源であるアミノ酸のシグナルとインスリン様成長因子の発現調節についても解析を進めていく。これらの解析を通して、多角的な研究課題の推進が可能になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、アミノ酸シグナルに関与する分子RagA/Cの新規結合蛋白質を生化学的手法により同定した。さらに、哺乳類培養細胞を用いた実験およびショウジョウバエを用いた遺伝学的解析により、同定した蛋白質の機能解析を進めている。申請書に記載した「研究の目的」に対して、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた結果をさらに発展させ、蛋白質間の相互作用に基づく機能解析を進める。哺乳類培養細胞を用いた実験、およびショウジョウバエを用いた遺伝学的解析の両方を進めることにより、アミノ酸シグナル伝達経路に関与する普遍的な分子基盤の解明が期待できると考える。 現段階で、研究計画の変更は特にない。
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