研究課題
若手研究(A)
Ephrin/Ephシグナルは、進化的に保存された双方向性のシグナル伝達機構であり、網膜-視蓋間の軸索投射、血管・体節形成など様々な発生現象を制御する。私は、独自に単離した糖核酸輸送体Meigoの分子遺伝学的解析を通して、「N型糖鎖修飾によってEphrin/Ephシグナルは制御されている」という仮説を導き出している。よって本研究では、ショウジョウバエの遺伝学、ゲノム工学、生化学、光科学的手法を最大限に活用することによって、本仮説を実験的に検証し、「生体内におけるEphrin/Ephシグナルの新たな制御機構の理解とその生理的意義」の解明を目指す。平成23年度は以下のような成果を得たので報告する。1.糖核酸トランスポーターMeigoの糖核酸基質特異性の確認Meigoの糖核酸輸送能(UDP-GalNAc,UDP-Manなど7種類)に関して酵母ミクロソームを用いた生化学的解析を行い、UDP-Manに関して僅かな輸送活性を見出した。2.MeigoによるEphrin糖鎖修飾制御の意義Ephrin糖鎖修飾がEphrin/Ephシグナルに与える影響を調べた。Ephrin蛋白質内に存在するN型糖鎖付加アミノ酸・アスパラギン(N)4カ所をそれぞれグルタミン(Q)へ置換し(N型糖鎖欠損Ephrin[NQ])、それらに関するUASトランスジェニックショウジョウバエを作成した。その効果を遺伝学的に検証したところ、EphrinにおけるN型糖鎖修飾はEphrinが生体内で機能するために必要であることを見出した。3.触角葉神経回路形成におけるEphrin/Ephシグナルの機能解析に向けた準備Ephrin,Eph遺伝子機能を生体内で制御する目的で、それぞれの遺伝子に対するmicroRNAトランスジェニックショウジョウバエを作成した。現在、それぞれのmicroRNA系統の効果を検証中である。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した内容に関しては、ほぼ全て順調に進んでいる。
本研究はこれまで主にショウジョウバエを用いた遺伝学的なアプローチを行い、生体内における単一細胞レベルでのMeigo分子の機能解明を進めてきた。その結果、嗅覚系投射神経では非常に特徴的な表現型を示し、Ephrinと特異的に相互作用することが明らかとなった。今後は、このMeigoの機能が他の神経、および組織においていかに必要とされるかを解明していく予定である。また、Meigoの糖核酸輸送体、及び小胞体ストレス応答蛋白質としての機能を更に詳細に解析するためには、生化学的な実験に基づく定性・定量的なアプローチが必要である。よって現在、糖鎖生物学を専門に研究しているグループとの共同研究を計画中である。更に、本研究の過程でEphrinの嗅覚系回路形成における新たな機能が発見されたため、その分子機構についても追究していきたい。
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PLoS One
巻: 7 ページ: e30265
PMID:22347370