研究概要 |
昨年度、Wnt、BMPシグナルが細胞移動を伴う胚原基形成過程で重要な役割を果たしていることを示唆するデータを得ていたが、引き続きGFP発現トランスジェニックコオロギの系統を用いた胚発生ライブイメージングの系による解析をさらに詳細に行った。両シグナル経路に関わる因子の遺伝子を、RNAiにより複合的にノックダウンするなどの解析を通じ、WntシグナルとBMPシグナルが協調的に胚後部のパターン形成を制御している可能性を示唆す結果を得た。BMPシグナルの胚前部パターン形成への役割についてもデータが得られており、解析を継続している。 一方、コオロギのゲノム編集に関して、人工制限酵素ZFNおよびTALENによる遺伝子ノックアウトの成果について論文を発表し(Watanabe et al., Nat. Commun., 2012)、また、招待講演を行った(Mito, Janelia Workshop, 2013など)。本年度は、ZFN/TALENによる遺伝子ノックインの系を確立すべく、相同組換え用ベクターを構築し実験を行ったがノックインを示す結果は得られなかった。しかし、並行して進めていたCRISPR/Casシステムによるコオロギゲノムへの標的特異的変異導入に成功し、しかも、本方法によってZFN/TALENよりも顕著に高い効率で変異導入が可能なことを示す結果を得た。遺伝子ノックインにも有効であると期待される。 さらに、コオロギゲノム解読について、新学術領域研究・ゲノム支援の支援課題としてシーケンスデータの情報解析支援を受けたことにより、難航していたアセンブリの状況が大幅に改善された。スキャフォールドN50が500kbを越え、実用的なレベルに到達した。さらなる連結性(contiguity)向上を目指しつつ、一方で共同研究者とのアノテーションの準備を進めている。
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