研究課題/領域番号 |
23687034
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
市橋 伯一 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 招聘教員 (20448096)
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キーワード | 進化 / 自己複製 / 生命の起源 / 無細胞翻訳系 / エマルション |
研究概要 |
本研究では人工自己複製反応を実験的に進化させることにより、自己複製反応系は進化して生命の特徴である高効率性や複雑性を獲得することができるのかを実験的に問い、その進化過程を詳細に解析することにより、進化プロセスがどのように進行するのかを理解することを目的としている。本年度は、RNA複製反応を約100世代にわたり継代した。当初の複製効率は大変低く、そのままでは次の反応を続けることが困難であったため、複製したRNAを逆転写反応とPCR反応、そしてRNA合成反応により増幅した。この一連の操作を100回繰り返した。約20回目までは、平均のRNA複製能力は徐々に低下した。 この原因は変異の蓄積により、多くのRNAの複製能力が低下したためだと考えられる。その後20回目以降は逆に平均RNA複製能力が上昇し、最終的に元のRNAの約30倍の複製能力を示した。最終的に得られたRNAをクローン化し、いくつかの配列を解析したところ、約20個の変異が集団内に固定されていた。 これらの結果は、RNA自己複製反応を継代することにより、複製エラーにより変異が導入され、RNA複製能力に多様性が生じ、より複製能力の高いRNAがより多くの子孫を残すことによって集団内での割合を上昇させたことを支持している。この多様性の創出により子孫を残した個体の選択は、まさにダーウィン進化が起きたことを示している。そしてその進化は約20の変異によって達成されたていた。今後、さらに継代を続けるとともに、進化途中の配列を解析することにより、進化プロセスの詳細が理解できるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つは、RNA複製反応を継代することにより、より高効率に複製するRNAを進化させることである。今年度の継代実験で、すでに30倍反応効率の高いRNAを得ることができた。これは上記の目的がすでにある程度達成されたことを意味する。
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今後の研究の推進方策 |
いまのところ継代実験は順調であるため、このままさらに長期間の継代実験を行う。また、これまでは人為的な複製を行っていたため時間がかかっていたが、ある程度複製能力の上がった現在のRNAでは不要になっている可能性がある。もし人為的な複製が不要であれば、継代実験のスピードが約6倍に向上するため、こちらの可能性も併せて検討する。いずれかの方法で継代をさらに続けながら、これまでの進化過程の配列解析を行う予定である。
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