研究課題/領域番号 |
23687034
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
市橋 伯一 大阪大学, 情報科学研究科, 招へい教員 (20448096)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 進化 / 生命の起源 |
研究概要 |
本研究では人工自己複製反応を実験的に進化させることにより、自己複製反応系は進化して生命の特徴である高効率性や複雑性を獲得することができるのかを実験的に問い、その進化過程を詳細に解析することにより、進化プロセスがどのように進行するのかを理解することを目的としている。昨年度は、RNA複製反応を約100世代にわたり継代し、今年度ではさらに約500世代継代した。昨年度に比べ継代回数が大きく上昇したのは、ある程度進化が進んだことにより、人為的な増幅作業が不要になり、効率的な実験が可能になったためである。 本年度の進化実験の結果、最終的にRNA複製反応の効率は100倍以上に上昇した。そして最終的に得られたRNAには38種類の変異が固定されていた。これらの結果は、RNA自己複製反応を継代することにより、ダーウィン型の進化が起きたことを示している。すなわち、複製エラーによりRNAの多様性が生じ、より複製能力の高いRNAがより多くの子孫を残すことによって集団内での割合を上昇させ、その結果、集団内に固定されたことを示唆している。 また最終的に得られた自己複製RNAは、一切の人為的増幅を必要としなくなった。すなわち、ただ栄養として無細胞翻訳システムを供給するだけで、ほぼ無限に増えることができるようになった。このような翻訳を介して再帰的に複製するシステムは、これまで生物以外では存在しておらず、本研究で構築されたシステムは、今後初期生命の成り立ちを理解するうえで有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では3年をかけて進化実験を行い、人為的な複製がなくても再帰的に自己複製できるRNAを進化させることを目的としていた。しかし、2年目となる今年度ですでにこの基準を達成したRNAが進化してきた。したがって、当初の計画以上に進展していると考えられる。これにより、最終年度は進化系列の解析に集中し、より詳細な解析が可能になるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
継代実験は予想以上に順調に進行し、ほぼ終了した。これにより、継代実験と並行して行う予定であった進化プロセス解析を来年度に集中して行う。方法としては、配列解析、および生化学解析を行う。
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