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2011 年度 実績報告書

生活習慣病遺伝子を指標としたアジア地域での農耕・遊牧への遺伝的適応の実証研究

研究課題

研究課題/領域番号 23687036
研究機関自治医科大学

研究代表者

中山 一大  自治医科大学, 医学部, 助教 (90433581)

キーワード生活習慣病 / 遺伝子 / 遺伝的多様性 / 自然選択 / 農耕 / 牧畜 / 内臓脂肪 / 東アジア
研究概要

東アジア人における農耕あるいは遊牧への生物学的適応の証拠を見つけるべく、生活習慣病・代謝異常に関与する遺伝子の多型・変異を、約5,000人分の東アジア人のDNA試料を用いて遺伝疫学的・集団遺伝学的に解析した。平成23年度は遊牧民族であるモンゴル人のゲノムワイドハプロタイプ地図の作成準備を進めると共に、幾つかの候補遺伝子について詳細な解析を行った。その中でも、細胞内シグナル伝達に関与する偽キナーゼとして知られるTRIB2の遺伝的多様性を日本人3,013人について調査し、TRIB2遺伝子の3非翻訳領域に存在する一塩基多型(SNP)が、腹囲周径・内臓脂肪面積と強く関連することを見出した。さらに、パイロシーケンシング法によってTRIB2遺伝子領域の多型・変異検索を行ったところ、同SNPはTRIB2遺伝子のポリA付加シグナル近傍の、進化的に保存された領域に存在する2塩基の挿入/欠失多型と強く連鎖しており、TRIB2の転写量に影響を与えていることが明らかになった。さらに、東アジア人集団におけるTRIB2遺伝子周辺のSNPハプロタイプ情報を精細に調査したところ、腹囲周径・内臓脂肪面積と強い関連をしめしたSNPを含むハプロタイプ群に正の自然淘汰が作用したことを支持する証拠を見出した。このような正の自然淘汰の痕跡はアフリカ人・ヨーロッパ人のゲノムには認められず、TRIB2遺伝子に作用した自然淘汰は東アジア人特異的であると考えられた。興味深いことに、正の自然淘汰によって頻度が上昇していたのは、より小さい腹囲周径・内臓脂肪面積と関与する"痩せ型"のアレル群であり、これはTRIB2遺伝子が乏しい食料資源を効率的に脂肪として蓄えるための、いわゆる"倹約遺伝子"としてではなく、別の生物学的意義によって自然淘汰の標的となったことを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

内臓脂肪の蓄積に関連する新規の遺伝子を同定したうえ、日本人など農耕を生業としてきた東アジアの人類集団で特異的に正の自然淘汰が作用した証拠を見出すことができた。

今後の研究の推進方策

平成23年度の主な成果は候補遺伝子アプローチ研究によって得られたが、モンゴル人の全ゲノムハプロタイプ地図の作成を続行し、前提によらない網羅的ゲノム解析により遊牧民・農耕民に特異的な正の自然淘汰の痕跡を検索し、各種代謝パラメータと当該遺伝的多様性の関連性を究明していく予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] OPCML gene as a schizophrenia susceptibility locus in Thai population2012

    • 著者名/発表者名
      Benjaporn Panichareon, Kazuhiro Nakayama
    • 雑誌名

      Journal of Molecular Neuroscience

      巻: 46 ページ: 373-377

    • 査読あり
  • [雑誌論文] High prevalence of an anti-hypertriglyceridemic variant of the MLXIPL gene in Central Asia2011

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Nakayama
    • 雑誌名

      Journal of Human Genetics

      巻: 56 ページ: 828-833

    • 査読あり

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公開日: 2013-06-26  

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