研究課題
平成25年度は、遊牧集団に特的な環境要因に適応的であったと考えられる遺伝子多型を、全ゲノムレベルの解析で包括的に調査した。モンゴル人48名について約220万のSNPのジェノタイピングを行い、公共データベースに登録されている日本人、中国漢人の全ゲノムSNPジェノタイプ情報と比較を行うことにより、遊牧集団と農耕集団の間で大きく多様度が異なるゲノム領域を検索した。古典的な遺伝的分化度の指標であるFixation Indexと遺伝子セットエンリッチメント解析を組み合わせた進化遺伝学的解析の結果、この三集団の間では、1)アルコール脱水素酵素遺伝子ファミリーやアルデヒド脱水素酵素遺伝子ファミリーに代表されるアルコール代謝・糖新生・脂質代謝に関わる遺伝子群、2)ヒト白血球抗原遺伝子群やインターロイキン遺伝子ファリーなどの原虫・細菌感染や腸内細菌叢の恒常性に関わる遺伝子が特に大きな遺伝的分化度を示すことが明らかになった。これらの遺伝子群は、遊牧生活に特徴的な環境要因、すなわち、動物性脂質利用が優勢な食行動や家畜由来の感染症の蔓延などと、生物学的に密接な関係があり、遊牧生活への適応の遺伝的基盤の一部であると考えられる。さらに、3)脂肪細胞の機能・分化に関わる遺伝子群や4)低酸素暴露反応に関わる遺伝子群など代謝異常の発露に大きく関わる遺伝子群も集団間で大きな差を示していた。3)に含まれる遺伝子群の中で、特に大きな遺伝的分化度を示すSNPについて、日本人3013名を対象として肥満形質との関連解析を行ったところ、2型骨形成タンパク質(BMP2)とcAMP応答配列結合タンパク質1(CERB1)の近傍のSNPが、ボディマス指標や内臓脂肪面積と関連を示すことが明らかになった。これら集団間で大きな遺伝的分化度を示すSNPが、モンゴル人と日本人の間で観察される代謝特性の差異に寄与していることが考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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