研究課題/領域番号 |
23688004
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山田 哲也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20422511)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アサガオ / 花弁老化 / 開花 / 暗期応答 / 次世代シーケンサー / トランスクリプトーム解析 / アセンブラ / 参照配列 |
研究概要 |
アサガオ品種‘紫’において,花弁が展開する前の蕾の状態で受ける暗期の長さが,その後の花弁の展開および老化(インローリング:萎れを伴う花弁の巻込み現象)が開始する時期に影響を及ぼすことを明らかにした.そこで,異なる長さの暗期を処理した花弁において,発現量に顕著な差異を示す遺伝子群をSuppression Subtractive Hybridization法を用いて単離した.また,それらの遺伝子の塩基配列を解読し,その特徴から各遺伝子の機能を推定した.さらに,リアルタイムPCR法により,暗期処理した花弁における各遺伝子の発現量を詳細に調査したところ,いくつかの遺伝子で暗期応答性を確認した.それらの遺伝子は花弁の展開および老化の制御に関与している可能性がある. 次世代シーケンサー(NGS)を用いたトランスクリプトーム解析には‘参照配列’が必要となる.参照配列を新たに構築する場合,「アセンブラ」と呼ばれる解析プログラムを用い,NGSで得られた短い塩基配列(リード)を接続し,元の塩基配列を新規に再構築(アセンブル)して,構築された切れ目のない塩基配列(コンティグ)を参照配列として利用する場合がある.アセンブラには様々な種類があり,その解析条件も多様なため,参照配列として利用可能な配列再現性の高いコンティグを構築するためには,各種アセンブラの特徴および最適な解析条件を明らかにした上で,アセンブルを実施することが重要である.そこで,アサガオの花弁よりmRNAを単離し,その塩基配列を次世代シーケンサーで解読(RNA-Seq)した.また,RNA-Seqで得られたリードについて,複数のアセンブラおよび解析条件でアセンブルを行い,構築されたコンティグの配列再現性を評価することで,次世代シーケンサーの応用解析に利用可能な参照配列を構築するための基礎的な知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代シーケンサーを用いた比較トランスクリプトーム解析に必要な参照配列の構築を試みたところ,アセンブル条件の最適化を行わないと,正確な参照配列が得られないことが判明した.様々な種類のアセンブラを用い,複数の条件下でアセンブルを行わなければならなかったため,トランスクリプトーム解析の実施が予定よりも遅れている状況である.また,研究棟の改修工事により,研究材料(アサガオ)を育成するために必要な恒温室が一定期間使用できなくなったため,実験を中断せざるを得なかった.
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今後の研究の推進方策 |
当初は,アサガオ花弁の老化開始時期に認められた品種・系統間の差異に基づき,花の寿命(開花から花弁老化の開始までの期間)を支配している遺伝子の単離を試みていただが,その後の研究で,花の寿命に,開花前の暗期の長さやメラトニンが重要な要因となっていることが判明したため,これらを利用して新たに花の寿命に関わる遺伝子を単離することも試みることにした. また,次世代シーケンサーを用いた比較トランスクリプトーム解析を実施するに当たり,より正確な参照配列を構築する必要が生じたため,RNA-seq解析(mRNAの塩基配列解読)を実施して,アセンブルに用いるリードデータを増加する予定である.これによりトランスクリプトーム解析に利用可能な参照配列が構築され,所期の目的(花弁老化の品種関西に関わる候補遺伝子の同定)を達成することができるようになる.
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