研究課題
NADPH oxidase (Nox)の細胞内局在性を明らかとするために、NoxBと蛍光タンパク質の融合遺伝子を導入した変異株を作出した。融合遺伝子の導入の際には、NoxB欠損変異株を用い、融合遺伝子がコードしているNoxBが機能回復していることを指標として変異株の選抜を行った。蛍光タンパク質として、一般的であるGFPを用いたが、その局在性を見出すことはできなかった。この理由として、タンパク質の分解が活発に起きていると考え、蛍光タンパク質寿命の長いmCherryを用いた。その結果、mCherryの蛍光は付着器に局在することが明らかとなり、NoxBが侵入する際に重要な働きを担っていることが細胞学的にも示された。他の糸状菌におけるNoxタンパク質の局在性が明らかとなっていない状況と、蛍光タンパク質の寿命が長いmCherryでのみ陽性シグナルが観察された結果より、Nox産物は、翻訳されて機能を発揮すると速やかにタンパク質分解系へと送られる仕組みが存在していることを示唆している。この発見は、Noxの機能解析を進める上で非常に重要であり、タンパク質分解系を考慮した実験系の構築が求められる。また、NoxBの細胞内局在性を制御している機構を明らかとするために、Polarisomeおよびアクチン繊維の可視化を試みた。PolarisomeはFM-4-64で蛍光染色が可能であるが、胞子発芽体では菌糸先端および付着器において陽性シグナルが観察された。一方、アクチン繊維はアクチン結合性オリゴペプチドをGFPと融合させたLifeAct-GFPを導入した変異体を用いてライブセルイメージングを行った。その結果、アクチン繊維は付着器において配向が集積していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
NoxBの局在性が明らかとなり、病原性発揮に重要であることが細胞学的にも示された。さらに、Noxタンパク質の分解が速やかに行われることが推測され、新たな研究の方向性が見出された。
NoxBの局在性が明らかとなったが、NoxAの局在性についても併せて解析を行い、両者の使い分けがどのような仕組みであるのかを明らかとする。また、Noxが局在するダイナミクスはアクチンの他にどのような複合体が形成されているのか、さらなる解析を進めていく。また、Noxタンパク質の分解が速やかに行われている可能性を考慮し、分解系を阻害する試薬を添加することにより、Noxタンパク質が安定するのか、その効果により、複合体形成の解析効率が飛躍的に向上することが期待される。
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Journal of Electron Microscopy Technology for Medicine and Biology
巻: 25 ページ: 115