研究課題/領域番号 |
23688008
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
大門 高明 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 研究員 (70451846)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | カイコ / フラボノイド / 繭 / TALEN / ノックアウト / 進化 |
研究概要 |
1.カイコB8斑油系統:カイコのB8斑油系統では、蛍光繭(フラボノイド成分有り)と非蛍光繭(フラボノイド成分無し)が分離する。本年度は、蛍光繭形質は、単一の遺伝子座によって支配され、蛍光繭形質が優性であることを明らかにした。また、マッピングのF2集団を作成し、比較的少数のF2個体においてddRAD-seq解析を行った。ddRAD-seqの結果、この蛍光繭形質は、20番染色体に座乗することが強く示唆された。この座位はこれまでの遺伝解析からも同定されていない、新規の繭フラボノイド関連座位である。 2.カイコのゲノム編集法の確立:TALEN, CRISPR/Cas9を用いて、カイコにおけるゲノム編集法の最適化を検討した。その結果、カイコではTALENが非常に効率よくターゲット遺伝子を破壊できることを見出し、実験系の最適化を図ることができた。また、2ペアのTALENを用いたlarge deletion誘発についても検討したところ、少なくとも4.5-kbまではdeletionさせることに成功した。 3.カイコ近縁種の繭フラボノイドの解析:H25年度は、ウスバクワコの繭フラボノイド成分の分析を完了した。ウスバクワコはカイコと同じ桑を食草とするにも関わらず、繭フラボノイド成分はカイコとは全く異なっており、ガラクトースが付加された新規成分が主成分であることが判明した。一見似た色に見えても、繭フラボノイドの成分には大きな種特異性が存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B8斑油系統における蛍光繭座位の遺伝解析を着実に進め、20番染色体に落とすことに成功した。この座位は全く新規であるため、今後の解析の進展によって、フラボノイド繭形質の遺伝子基盤の全容解明につながると期待される。 また、カイコにおけるゲノム編集法の確立を着実に進展させることができ、もはやノックアウトを「当たり前」の手法とすることができた。また、カイコ近縁種の生活史およびフラボノイド成分の解明を順調に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.B8斑油系統における蛍光繭決定座位 ddRAD-seqで得られた結果を、常法のマッピング手法をもちいて検証する。すなわち、得られたRAD tagに基いてSNP markerを作成し、20番染色体にリンクすることを確認する。確認後、マッピング用のF2集団のゲノムDNAを用いてさらに責任領域を絞りこみ、責任遺伝子を特定する。 2.カイコにおけるゲノム編集法の高度化 single locusのノックアウトについては実験系の最適化が完了した。今後は、ノックインの効率を上げる試みと、より大きな領域のkarge deletionを誘発させる方法の最適化を試みる。 3.カイコ近縁種の繭フラボノイド成分 引き続き、カイコ近縁種の繭フラボノイド成分を同定し、フラボノイド成分の種特異性・普遍性を明らかにする。
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