研究概要 |
イネ科植物は「節」において複数の維管束系を著しく発達させ、根から吸収したミネラルの発達中の器官や穀粒への優先的な分配を実現しているが、その分子機構はほとんど解明されていない。本研究ではイネの節においてFe, Zn, Mn, Cuなどのミネラルの分配に関わるミネラル輸送体遺伝子を複数種類同定し、その機能と節における役割を解明する。 前年度に引き続き、節におけるマイクロアレイ解析等の結果、高発現していることが明らかになったミネラル輸送体候補遺伝子、OsNramp3、OsHMA2、OsYSL16について、Tos17やT-DNA挿入による破壊株などを用いた機能解析を行った。OsYSL16については、ニコチアナミン-銅錯体を輸送し、節の維管束篩部における発現に加えて葉の維管束においても高発現していることを明らかにした。これによってOsYSL16は下位葉から新葉や穂への銅の再転流に寄与していた。OsHMA2については、節の維管束篩部の細胞膜に局在し、亜鉛およびカドミウムを細胞内に取り込む活性があることを明らかにした。変異体を用いた解析から、亜節を経由して専ら新葉や穂へと輸送される鉛およびカドミウムの特徴的な分配様式をOsHMA2が担っていることを明らかにした。 節のミネラル分配機構において重要な役割を果たすと考えられる肥大維管束周縁部の木部転送細胞における遺伝子発現の制御機構を明らかにするため、木部転送細胞に高発現する輸送体Lsi6およびOsNramp3のプロモーター解析を行った。異なる長さの上流配列やLsi6の構造遺伝子領域を含む6種類のコンストラクトを用いて形質転換イネを作成し、節の免疫組織染色を行ってプロモーター活性の組織特異性を確認したが、予想に反して、いずれのコンストラクトも木部転送細胞以外の組織で比較的高い活性がみられた。
|