| 研究概要 |
イネ科植物は｢節｣において複数の維管束系を著しく発達させ、根から吸収したミネラルの発達中の器官や穀粒への優先的な分配を実現しているが、その分子機構はほとんど解明されていない。本研究ではイネの節においてFe, Zn, Mn, Cuなどのミネラルの分配に関わるミネラル輸送体遺伝子を複数種類同定し、その機能と節における役割を解明する。
前年度に引き続き、節において高発現しているミネラル輸送体候補遺伝子の解析を行い、本年度はOsNramp3について、T-DNA挿入破壊株およびRNAiによる発現抑制株を用いてより詳細な解析を行った。OsNramp3は、栄養成長期の基部節および生殖成長期の上位節のいずれにおいても、肥大維管束木部と分散維管束篩部の双方に発現していた。遺伝子発現レベルは環境中のマンガン濃度の変動によって影響を受けなかったが、タンパク質レベルでは、マンガン欠乏条件では細胞膜に局在していたのに対して、過剰のマンガンを与えると数時間程度で速やかに小胞に取り込まれ分解された。これらの働きにより、OsNramp3は欠乏条件では限られたマンガンを新葉や穂へと優先的に分配し、過剰条件では蒸散量に応じて下位葉へとより多く分配するスイッチとして機能することを明らかにした。
節のミネラル分配機構において重要な役割を果たす肥大維管束木部転送細胞における遺伝子発現の制御機構を明らかにするため、木部転送細胞に高発現遺伝子(Lsi6、OsNramp3)のプロモーター解析を行った。約2kbpまでの上流配列、イントロンを含むゲノム領域、3’UTRについてもコンストラクトを作成し形質転換イネにおいてレポーター遺伝子の発現を確認した。節以外においては内在の遺伝子と同様の発現様式を示したが、節では本来とは異なる組織局在が見られ、節では何らかの特異的な遺伝子発現制御が行われていることが示唆された。
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