研究課題/領域番号 |
23688010
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
和崎 淳 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (00374728)
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キーワード | 有機酸 / 酸性ホスファターゼ / リン / 分泌 / シロバナルーピン / シロイヌナズナ / 土壌未利用リン / トランスポーター |
研究概要 |
リン酸質肥料の原料であるリン鉱石資源は涸渇に瀕している。その一方で、多くの耕地土壌には難溶性リンや有機態リンの形で未利用のリンが多く蓄積している。これらの土壌未利用リンの吸収能を向上することができれば、リン酸質肥料の使用量の削減が可能となると考えられる。本研究は、未利用リンの吸収能力のうち、有機酸トランスポーターと酸性ホスファターゼの能力を活用することにより、植物による土壌未利用リンの吸収能を向上することを目的とする。具体的には、根分泌性酸性ホスファターゼの機能および有機酸分泌に関わるトランスポーターの機能の活用を試み、これらの根分泌物質と根圏微生物の間の相互作用の評価を行う。 今年度は、シロイヌナズナより単離したリン欠乏誘導型有機酸トランスポーターのうち、リンゴ酸トランスポーターAtALMT3およびクエン酸トランスポーターAtMATE-PI1のプロモーター::GUS発現系統を確立し、発現部位局在性を確認したところ、いずれにおいても根端上部の有機酸分泌の高い領域において強い発現が見られた。AtALMT3のアミノ酸配列をもとに、有機酸分泌能の高いシロバナルーピンのオーソログLaALMT-PI1の完全長cDNAを単離した。そのアミノ酸配列から、LaALMT-PI1は細胞膜に局在するリンゴ酸トランスポーターであることが示唆された。また、クラスター根を形成し、低リン条件下でもよく生育する木本植物Hakea laurinaからクラスター根特異的に発現する酸性ホスファターゼHISAP1の完全長cDNAを単離し、そのアミノ酸配列から、HISAP1は分泌型タンパク質であることが示唆された。さらに、来年度以降の解析対象である有機酸トランスポーターと酸性ホスファターゼの単独および多重過剰発現系統の作出に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した解析内容はほぼ達成できた。AtALMT3の電気生理試験による輸送活性測定については、現在の測定条件では測定できていないが、これは別に相互作用する分子があることを示唆する結果であり、新たな知見を得ることにつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初計画通りに推移しているため、研究内容に大きな変更はない。今年度までに単離、解析を進めてきた有機酸トランスポーターの機能解析を進めるとともに、酸性ホスファターゼの酵素化学的特性の調査を行う。これらの遺伝子の単独あるいは多重発現系統が確立でき次第、栽培試験に供試する。それぞれの遺伝子のプロモーターの発現部位の特徴を活用することによる効率的発現調節の検討にも着手する。今年度の電気生理試験の結果などから、新たに、これまでに単離したAtALMT3と相互作用する分子が存在することが示唆されたため、その分子の単離、解析に着手する。
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