研究課題/領域番号 |
23688010
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
和崎 淳 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00374728)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | リン / 有機酸 / 酸性ホスファターゼ / 分泌 / シロバナルーピン / シロイヌナズナ / 土壌未利用リン / トランスポーター |
研究概要 |
土壌未利用リンの吸収能を向上することができれば、リン酸質肥料の使用量の削減が可能となることが期待される。本研究は、未利用リンの吸収能力のうち、有機酸トランスポーターと酸性ホスファターゼの能力を活用することにより、植物による土壌未利用リンの吸収能を向上することを目的とする。具体的には、根分泌性酸性ホスファターゼの機能および有機酸分泌に関わるトランスポーターの機能の活用を試み、これらの根分泌物質と根圏微生物の間の相互作用の評価を行う。今年度は、以下の成果を得た。まず、有機酸トランスポーターの単離、解析においては、これまでに分析したシロイヌナズナ、シロバナルーピンに加え、低リン条件下でよく生育する木本植物ハケアからクエン酸トランスポーターと考えられるHlMATE-PI1の単離に成功した。この遺伝子は、ハケアにおいて最もクエン酸分泌量の多い成熟クラスター根で最も発現量が多いことが示された。次に、昨年度までに単離した有機酸トランスポーター候補遺伝子と分泌性酸性ホスファターゼ遺伝子LASAP2について、単独または多重の形質転換系統の育成を進め、次年度に栽培試験を行うめどをつけた。また、標準リン条件、リン欠乏条件で栽培したシロバナルーピンの根での遺伝子発現および根分泌物と根の抽出物に含まれる代謝産物について、RNA seqによるトランスクリプトーム解析およびCE-MSを用いたメタボローム解析を行った。その結果、リン欠乏条件で膨大な量の有機酸分泌が増える他にアミノ酸など複数の化合物が多く分泌されることが明らかとなった。シロバナルーピン根圏で見られる特異的な微生物群集構造の変化には、基質としての有機酸分泌だけでなく、これらの分泌物質が影響を及ぼしている可能性が示唆された。カヤツリグサ科植物において、ダウシフォーム根を多く形成する個体の根圏での難利用性リンの有効利用が行われていることを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した解析は順調に進めている。形質転換系統は次年度の解析のめどが立っており、順調に推移している。また、電気生理試験による輸送活性の検証が進んでいないが、これについては別の因子の関与を示唆するものであり、形質転換系統を用いた解析により補うことができる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度までに単離、解析を進めてきた有機酸トランスポーターについては、シロイヌナズナを用いた形質転換系統およびアフリカツメガエルの電気生理試験、GFP融合タンパク質による解析、膜分画によるウェスタン解析などにより、詳細な機能解析を進める。今年度までに形質転換系統の確立を進めてきたので、この系統群を用いて有機酸と酸性ホスファターゼの分泌能を強化した個体における土壌未利用リンの有効利用が可能であるかどうかについて検証を行う。さらに、我が国に唯一自生するヤマモガシ科植物のヤマモガシを対象に、クラスター根の形成とその根圏における土壌リンの動態変化を検証する。
|