研究課題
本研究は、植物に多く共生しその生育を促進するMethylobacterium属細菌について、(1)数多く収集した新種菌について系統分類を行う。(2)植物生育促進作用に関わる分子メカニズムを解明する。(3)本属細菌の植物体内での生態を明らかにする。ことを目的としている。(1)についてはMALDI-TOF/MSを用いた菌体総タンパク質の質量分析スペクトルパターンの詳細な解析により、15-20種の新種株が得られており、生化学的特徴の解析を済ませた。新種提唱のためには脂肪酸分析、キノン分析が最近義務づけられたため、順次行い、DNA-DNA hybridizationを行う予定である。(2)について、シデロフォア合成遺伝子の破壊株を作成し、鉄の非存在下で生育が弱まること、野生株の培養液やFeC13溶液を加えると生育することを確認した。野生株の培養液からシデロフォアの精製を行っており、構造解析に移る段階である。本属細菌からのシデロフォアの報告はこれまでなく、新しい化合物の提唱が可能である。(3)について、本属細菌由来の「ある物質」PQQが植物の気孔を開くことを発見している。この効果は、(i)多くの植物でも同様に起こること(ii)気孔が開く濃度範囲が比較的狭く、与えすぎると逆に閉じること(iii)植物培養細胞に与えると活性酸素の生成が抑制されるが、濃度が高いと亢進すること(iv)植物において細菌の鞭毛タンパク質を認識して気孔を閉じるシグナル伝達経路に関わる遺伝子の欠損株植物体では気孔が開かない(v)気孔を閉じるシグナルである光(暗所)及びアブシジン酸にはPQQが拮抗しないこと、を確認している。以上から、PQQにより気孔が開くことが、本属細菌が敵として見なされていないことを示す分子レベルでの証拠となり、本属細菌が植物上で優占化可能な理由である。
2: おおむね順調に進展している
つい最近、本属細菌が持つメタノール脱水素酵素の中に、これまで知られていたカルシウム依存性のものだけでなく、ランタン(La)依存性のものがあることが論文として報告された。本属細菌が植物由来のメタノールを酸化する酵素に希土類元素が関わることが想定され、本属細菌と植物との関係を考えるにあたり避けて通れないポイントとなった。共同研究で論文化を図っている。このように当初の計画とは少々方針が異なったことも手がけ始めているため計画通りはないが、重要な新しいポイントを加え、本来の目的である相互作用の分子メカニズムを明らかにしていきたいと考えている。
概ね順調であり、大きな変更はないが、気孔を開く活性はこれまで全く報告がなく、慎重に実験事実を積み上げてインパクトの高い報告としてまとめたいと考えている。
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http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id1508.html