研究課題/領域番号 |
23688014
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安藤 弘宗 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20372518)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガングリオシド / 神経突起伸展活性 / PC12細胞 / 糖鎖 |
研究概要 |
昨年度は、合成ガングリオシドおよびその糖鎖部分を用いて、PC12細胞に対する神経突起伸展活性を調査した。その結果、活性の発現には脂質部分は必須ではないことを明らかにした。 本年度では、ヒトデ由来のガングリオシドLLG-3が比較的少ない糖残基数でありながら、有意な活性を示すことに着目し、LLG-3糖鎖による活性発現の詳細な検討を実施し、最小有効構造を決定することとした。糖鎖長と活性の相関を調べるため、LLG-3の全長糖鎖(4糖)および還元末端残基を一残基ずつ減じた3糖、2糖、単糖誘導体を合成した。次にこれらの糖鎖誘導体を用いてPC12細胞に対する突起伸展活性をNGF存在下で検討した。これまでに、3糖誘導体において有意な活性を確認することが出来た。また、LLG-3糖鎖の特徴であるシアル酸8位水酸基のメチル化修飾を除いた4糖誘導体を合成し、活性を検討したところ、8位メチル基を欠いた誘導体では活性が喪失することが明らかとなった。また、強力な伸展活性が報告されているナマコ由来のガングリオシドGAA-7の化学合成を実施し、糖鎖部分の合成に初めて成功した。現在は、GAA-7の全合成に向けて研究を進めている。同時に、合成した糖鎖部分の伸展活性の分析も進めている。 本研究課題のもう一つの目的であるガングリオシドとNGFRとの相互作用の可視化研究では、PC12細胞に対する神経突起伸展活性を示すことが知られているガングリオシドGM1の蛍光分子プローブの合成に成功し、生細胞膜上でのガングリオシドの1分子イメージングおよびGPI型蛋白質受容体との相互作用解析に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度以降に計画した最小有効構造の決定研究では、糖鎖類縁体の化学合成および有効糖鎖長の決定を計画しており、本年度では、5種類の糖鎖類縁体の合成と活性評価を実施し、有効糖鎖長に関する重要な知見を得ることが出来た。また、研究課題の申請時には予想していなかったシアル酸8位メチル基修飾の活性における重要性が見出されたことから、この点では、当初の計画以上の成果を得られることが出来た。 また、1分子イメージングによる糖鎖作用機構の解明研究では、神経突起伸展活性を示すガングリオシドの蛍光プローブの合成に成功し、当初の計画を達成した。さらに、NGF受容体と糖鎖の会合のイメージングを行うためのモデル実験として、生細胞膜上での糖鎖の1分子イメージングとGPI型タンパク質受容体(CD59)との会合を世界で初めて捉え、脂質ラフトの構造、機能、動態の解析に関する新しい知見を得ることが出来た。これは、本研究課題の遂行により得られた当初の予想を凌ぐ重要な成果と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
活性発現に必須の有効構造決定では、現在糖鎖長を削減した2糖、単糖誘導体の活性の解析が進行中であり、25年度中に最小有効構造が特定されると予想できる。この結果を受け、今後は最小有効構造のクラスターの合成を実施し、活性の増強を図る。クラスター化が活性増強に有効であれば、クラスターを光アフィニティープローブへと誘導し、糖鎖と相互作用するタンパク質および相互作用ドメインを決定する。 また、1分子イメージングによる作用機構の解明では、GM1蛍光プローブおよびその他のガングリオシド蛍光プローブを用いて生細胞膜でのNGF受容体との相互作用を1分子イメージングで捉え、ガングリオシドとNGF受容体の親和性における構造活性相関を明らかする。また、活性のある最小有効構造を蛍光プローブ化し、糖鎖とガングリオシド間での活性発現の寄稿位の差異をイメージングにより解明する。
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