研究課題
本年度において、以下の研究成果を上げることができた。1.神経突起伸展促進作用における構造活性相関の解析:昨年度においてヒトデ由来ガングリオシドLLG-3の三糖類縁体が天然構造と同様の活性を示すことが明らかとなった。本年度は、さらに糖鎖長を減じた二糖、単糖類縁体について活性評価を行い、これらは非活性であるという結果を得た。このことからガングリオシドLLG-3における最小有効構造は非還元末端三糖であることが明らかとなった。さらに、昨年度において末端シアル酸の8位水酸基のメチル化修飾が活性に重要であることが判明したが、本年度では、LLG-3三糖の9位メチル化体でも同様の活性を示すことが明らかとなった。NMRによる末端シアル酸のグリセロール側鎖の立体配座解析では、8-メチル体と遊離体とでは異なる配座をとることがわかり、この配座の違いが活性と関連していることが示唆された。また、強力な伸展活性が報告されている棘皮動物由来ガングリオシドGAA-7およびSJG-2の合成研究にも取り組み、GAA-7の全合成に成功した(論文投稿準備中)。また、SJG-2においては、シアル酸二残基を含む複雑な非還元末端構造の構築に成功し、全合成への課題を克服した。2.糖鎖の標的タンパク質の同定に向けた機能性プローブの合成:LLG-3三糖LLG-3三糖類縁体を用いて、その標的蛋白質を同定することとした。LLG-3糖鎖の二量体は低濃度(0.1nM)で活性を示すことが明らかとなり、微弱な糖鎖-蛋白質相互作用の増強に多量化が有効であることが示された。この知見を元に、光応答性のLLG-3プローブを合成し、標的蛋白質の同定を次年度試みる。本年度では、ジアジリジン基とビオチン基を連結した糖鎖修飾用ユニットの合成を完了した。
1: 当初の計画以上に進展している
24年度において、当初の計画以上の進展を見せ、特に構造活性相関研究と1分子イメージング用プローブの合成において、予想を上回る結果を得ることができた。この結果を受け、本年度はさらに活性におけるシアル酸側鎖水酸基のメチル化の重要性を詳細に調べることができた。また、LLG-3の二量化によって伸展活性が1000倍程度増強されることを見出し、活性強化の課題が計画以上に進展を見せた。この他の研究項目では、計画通りにしていることから、総じて本研究課題では当初の計画以上に進展していると評価できる。
今年度は、LLG-3プローブを合成し、LLG-3の標的蛋白質の同定を行う。その方法として、蛍光プローブを用いる蛍光免疫染色による標的蛋白質との共局在の検証、光応答性プローブを用いる標的蛋白質との架橋形成とアフィニティー分離による蛋白質の同定を実施する。その後、生細胞膜上での標的蛋白質とガングリオシドとの相互作用を1分子イメージングにより観察、解析する。また、細胞質内のシグナル伝達における影響を精査し、ガングリオシドによる神経突起伸展活性の分子基盤の骨子を明らかにする。
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