本年度は、前年度に調製工程を確立した自己組織化ナノセルロースエアロゲルについて、各種物性の詳細な解析を進めた。前年度の結果より、当該エアロゲルは発泡体状のタフな圧縮挙動を示すことが明らかになっていたが、本年度は密度の密度の異なるエアロゲルを5点(4~40 mg/cm^3)調製し、圧縮特性について統計解析を行った。得られた圧縮応力歪み曲線から、弾性率、降伏応力、エネルギー吸収量を算出した。その結果、全ての機械特性値が密度に直線的に比例した。一般的に、エアロゲルの弾性率は、密度に対して指数関数的に向上する。この高い密度依存性は、既存のエアロゲルの骨格構造が(特に低密度域で)不均一であることに起因している。つまり、密度と弾性率が直線関係を示した本エアロゲルは、構造上新規で均一な骨格構造を有していることが示唆された。また、既存のエアロゲルは低歪みで破断してしまうため、降伏応力やエネルギー吸収量に関する統計解析はなされていない。本エアロゲルは、降伏応力・エネルギー吸収量共に密度に比例しており、既報のエアロゲルに比べて本質的に強靭であると言える。さらに、試験後の圧密化したエアロゲルは、依然透明性が高く、フレキシブルであったことは興味深く、今後の展開が期待される。 また、エアロゲルの熱伝導率を測定したところ、極めて低い熱伝導率を示すことが判明した。特に密度17 mg/cm^3のエアロゲルが示した熱伝導率(0.018 W/mK)は、シリカエアロゲルが気中で示す最低伝導率に匹敵し、市販の各種断熱材、さらには空気の熱伝導率よりも低い値であった。この低熱伝導性は、本エアロゲルが超低密度であること、そして細孔サイズが大気の自由拡散距離(70 nm)よりも小さいことが要因であると考えられる。
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