研究概要 |
セルロース合成酵素は複数のサブユニットからなる複合体である。その構造解析のために、大腸菌発現系による組換え体セルロース合成酵素を得る実験系の構築を進めた。酢酸菌の合成酵素複合体は、BcsA, BcsB, BcsC, BcsDの4サブユニットからなると考えられているが、そのうち、最低限必要なサブユニットはAとBの二つと考えられている。これらの構造解析を進めるために、前年度に引き続きBcsAとBcsBの大腸菌共発現系を使い、精製実験を行ったが、構造解析に足る試料を得ることができなかった。 一方で、酢酸菌におけるセルロース合成活性を活性化するc-di-GMPを過剰生産させた大腸菌に、上述のBcsAとBcsBを発現させることで、セルロースを合成することのできる大腸菌形質転換体を得ることに成功した。以上から、本発現系による組換え体セルロース合成酵素が正しく発現しており、構造解析に使用可能である発現系であることが確認され、精製条件の検討が取るべき方針であることを確認した。 しかし上述のセルロース合成で得られたのはセルロースIIという非天然型の構造であり、天然型構造のセルロース合成に不十分であることが示唆された。そこでBcsAとBcsBに加えて、BcsCとBcsDも発現する大腸菌発現系を構築し、同様にセルロース合成を行わせたが、同様のセルロースIIが得られた。天然活性(セルロースI合成活性)の再構成のために必要な因子がまだ存在することが示された。 以上の大腸菌セルロース合成系をCESEC(Cellulose Synthesis in E. coli)と名付け、これを使い、点変異体によるセルロース合成を行わせ、保存性の高いアミノ酸を点変異させるとセルロース合成活性が消えることが確認された。
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