研究課題
養殖現場では赤潮や魚病が発生した際、経験的に絶食処理を行っている。特に、赤潮や特定の病気に対しては、絶食が有効であることが知られているが、その詳しいメカニズムはわかっていない。本年度は養殖魚に対する病原菌と有害プランクトンの暴露実験を行い、経時的な変化と有効性を解析した。マダイを用いてEdwardsiella tarda(E.tarda)の感染実験を行った結果、給餌群と絶食群ともに、感染によって数種のアミノ酸の血中量に変化がみられた。また、給餌群と絶食群ともに、暴露3日後に感染が確認された。したがって、E.tardaに対しては、絶食の有効性は顕著ではなく、今後、マダイイリドウィルス病などの各種病原体に対する応答メカニズムの違いや、各種アミノ酸の生理的指標としての有効性を検証していく必要がある。一方、ブリの幼魚に対してKarenia mikimotoi (K.mikimotoi)を曝露した結果、約20分で死亡した。この間、暴露5分では回復可能であるのに対し、暴露10分では回復しなかった。死亡直後の血中pHは低下しており、酸欠による酸性血症が起こっていたと考えられる。血中アミノ酸解析の結果、フェニルアラニンなど数種のアミノ酸に変化が観察された。フェニルアラニンは絶食により低下すること、また、カテコールアミン類の前駆物質であることから、神経伝達物質の合成や呼吸量・心拍数の増大との関連性が考えられ、現在、酸性血症を起こすまでの生理変化を詳しく解析中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は計画通りに魚病に対する感染実験を行うことができたことに加え、赤潮に対しても暴露実験を行うことができた。また、感染・暴露後の魚類における生理変化を詳しく解析することができた。
魚病に対する絶食の効果については、病原体の種により応答が異なる可能性が強く示唆されたことから、今後はEdwardsiella tarda(E.tarda)以外の病原体についても検討していく必要がある。また、赤潮については酸性血症に至るまでのメカニズムを詳しく解析していく。これらを元に、赤潮や魚病対策として、情報や技術を養殖現場に還元していく。
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Journal of Experimental Zoology Part A: Ecological Genetics and Physiology
巻: 317 ページ: 552-560
10.1002/jez.1747