研究課題/領域番号 |
23688023
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
糸井 史朗 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (30385992)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | フグ毒 / テトロドトキシン / TTX / クサフグ / トラフグ |
研究概要 |
本研究は、「フグは毒を何に使うのか?」という究極の命題へのアプローチとして、有毒フグであり安定して入手可能なクサフグを主なモデル魚に用いて実施している。 まず、「天然クサフグ試料における季節変改に伴うTTXの局在変化」については、前年度に引き続き、毎月神奈川県横須賀市長井の定点でクサフグの試料採取を行い、LC/MS/MS分析により各組織中のTTX量の変化を測定することでTTXの局在変化について検討した。前年度からのデータも合わせると、オスでは年間を通して皮膚に毒を局在させていること、皮膚への局在が低下する4月および8月には肝臓への局在が高まった。メスでは卵巣へのTTXの局在が高い傾向にあり、オスほどではないものの、冬季、5月および8月に皮膚におけるTTXの割合が高かった。また1個体あたりの有する最大TTX総量は、いずれの時期でもメスよりもオスで高く、その濃度もオスではるかに高かった。さらに、各組織における毒の分布にも雌雄差があった。一般に卵巣は猛毒、精巣は弱毒~無毒とされるが、これは生殖腺が確認できればその成熟段階を問わず卵巣でTTX濃度が高かった。猛毒とされる肝臓では、年間を通じてメスよりもオスでそのTTX含量および局在量が高かった。 「孵化仔魚におけるTTXの局在」については、神奈川県藤沢市江の島で産卵されたクサフグの受精卵を収集して孵化させた後、当該仔魚を用いて捕食実験を実施した。捕食者にはクサフグの産卵場周辺に生息する魚類の幼魚を用いた。また被食者の対照としてメダカ仔魚およびアルテミアの成体を用いた。その結果、クサフグ仔魚は、捕食者の種や個体を問わず咥えられた直後に吐き出されたのに対し、メダカおよびアルテミアは口腔に導入された後に吐き出されることはなかった。この結果は、先に得られている孵化直後の仔魚の体表を取り囲むように体表にTTXが局在することを支持する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通りに進展していると考えている。当該研究を進める中で、当初予想していなかった現象などが観察され、新たな課題として整理して取り組んでいる。「フグは毒を何に使うのか?」との命題解明に向け、着実に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の計画自体、複数年にわたって実施するものが多く含まれているため、これらを確実にこなしていく予定である。またこれら研究を進めていく中で、研究予期しない現象が観察されているが、研究協力者との議論の中でより本質に迫る方向性を見出しつつあるので、今後もより緊密に議論しながら研究を進めていく予定である。なお、当初予定していなかった飼育実験等を当初の計画に加えて実施しており、今後も継続予定である。
|