研究課題
本研究は、「フグは毒を何に使うのか?」との命題へのアプローチとして、有毒フグであり、安定して入手可能なクサフグに加え、種苗生産の盛んなトラフグを主なモデル魚に用いて実施している。前年度までの研究で、クサフグおよびトラフグともにふ化直後の仔魚は、体表を取り囲むようにTTXが局在することが明らかとなり、生活史で最も弱い時期を生き残るための武器としてTTXを利用していることが示唆された。そこで今年度は、母体内で卵巣を通して卵中に蓄積されたTTXがいかにしてふ化仔魚の体表に局在するに至るのかを明らかにするため、未受精卵および卵発生過程の試料を採取し、抗TTX抗体を用いる免疫組織化学染色に供した。同時に、卵発生に伴うTTX量の変化を明らかにするため、各試料の毒量をLC-MSMS分析により調べた。抗TTX抗体を用いる免疫組織化学染色の結果、クサフグおよびトラフグともに未受精卵および受精直後の卵では、卵黄部分が弱いながらもシグナルが観察され、TTXが卵中の特定部分には局在していないことが示唆された。その後、発生が進むとふ化直前には皮膚にTTXが局在することが明らかとなった。すなわち、胚発生に伴い、卵黄から外胚葉に相当する部分に母親由来のTTXが局在するようになり、最終的には皮膚に局在することが示唆される。本研究の結果は、トラフグ属魚類は、最も弱い仔魚期を生き残る確率を上昇させることで種を維持する生存戦略をとっているものと思われる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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化学と生物
巻: 52 ページ: 403-407