研究概要 |
本研究の目的は,本来的に企業的要素と家族的要素を併せ持つ農業経営をファーム・ファミリー・ビジネス(FFB)として再定義し,その「到達点」と「臨界点」を探ることにある。具体的には,FFBの「到達点」の確認とともに,(1)経営継承,(2)家族によるガバナンス,(3)経営資源の調達に関する問題の解決策と企業的農業経営のモデルを提示することを目標にしている。 本年度はまず,FFBに関する先行研究の整理を実施した。具体的には,我が国の農業経営学研究における「個別経営」に関して,農業への新規参入(自然人・法人),経営継承(家族内継承・第三者継承)に関する近年の研究動向を整理した(安藤光義・内山智裕「個別経営に関する研究の評価と展望」,日本農業経営学会編『農業経営研究の軌跡と展望』農林統計出版,2012年2月,pp.149-173.)。また,「家族経営」と「企業経営」の異質性と同質性に関する論考を改めて整理した(内山智裕「農業における『企業経営』と『家族経営』の特質と役割」,日本農業経営学会編『次世代土地利用型農業と企業経営-家族経営の発展と企業参入-』養賢堂,2011年8月,pp.73-87.)。 また,次年度の本調査に向けた予備的現地調査も実施した。まず,産地銘柄牛である「伊賀牛」の全生産者に対する意向調査を試みた(実際の協力農家は7割程度)。そこでは,後継者の有無といった家族的要素と,販売単価の低下といった経済的要素により,個々の生産者が多様な経営意向を持っており,将来の産地形成に大きく影響を及ぼすことが確認された。当調査の結果は,次年度に学会等で報告する予定である。
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