研究課題/領域番号 |
23688026
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
内山 智裕 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80378322)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業経営 / 経営発展 / 企業的農業経営 / 経営継承 / 家族経営 |
研究概要 |
今年度は,主に企業形態論の観点から考察を進めた。 これまで農業分野における企業形態論的整理は家族経営を主な対象としてきたが,一方で、従来の家族経営とは異なる「企業的家族経営」、「資本型」家族経営、「雇用型」家族経営などと呼ばれる経営や,家族労働力をかなり超える規模の雇用労働力を擁し、他産業における中小企業と同様の経営を展開し、さらなる発展を追求する経営が現れるようになった。また近年では農外産業からの農業参入も増加している。 我が国とは対照的に,欧米における農業の企業形態に関する議論は極めて少ないことを以下の点から整理した。 欧米農業における家族経営論の代表的著作を整理すると,家族経営と対峙する非家族経営の具体的イメージはないことがわかる。また,米国における家族経営は主に所有基準により定義されるが,労働力,土地所有,経営面積などの基準を適用すると,米国の農場全体に占める家族経営シェア(農場数,販売金額)は大きく変化する。米国においても家族経営は「理念形」としてあり,家族経営・非家族経営を明確化するものではない。 欧米における家族経営論に関する最新の著作においては,近年における家族経営論の系譜を整理している。そこでは,①家族がリスクを取る経営である,②家族内で世代間継承が行われる,③家族とビジネスの感情的な結びつきがある(family-ness),の3点を家族経営の特徴として挙げている。ここで1つの論点となるのは,②の世代間継承である。家族経営における後継者確保の困難化は,我が国に限らず欧米各国で共通してみられる。世代間継承が行われなければ家族経営ではないという見方がある一方で,親族以外への継承を積極的に捉える「第三者継承」の動きもみられる。つまり,欧米では,我が国のような非家族経営に対する期待は弱くと弱くとも,伝統的な家族経営像は確実にゆらいでいることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国や英国における家族農業経営に関する著作の執筆に参画したこと,また日本農業経営学会シンポジウム「農業経営と経営管理の企業形態論的検討-主として家族経営に着目して-」に参画し,ファーム・ファミリー・ビジネス論の現段階を国際比較および国内事情の観点から整理することができた。 また,英国等における現地調査から,家族経営とは異なる形態の農業経営の近年の動向についても把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新年度は,引き続き米国・英国・日本などを対象地域に国内外で現地調査を行い,ファーム・ファミリー・ビジネスに関する動向の調査分析を行う。 特に,ファーム・ファミリー・ビジネスと比較対象となる非家族経営の動向や,ファーム・ファミリー・ビジネスの近年における「弱み」となっている継承問題についての調査分析に注力する。
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