2014年は国連の国際家族農業年であった。全世界で8億人超の飢餓人口が存在しており、食料の増産と分配、特に開発途上国における農業の持続可能性を担保するためには、家族農業への支援が不可欠であることが再確認されている。ただし,本研究の主題は先進国における家族農業経営にあった。 最終年度は,これまでの研究成果を踏まえ,1)先進各国における家族経営論の整理,2)我が国における家族経営協定の普及,および3)企業的家族経営のさらなる経営発展に向けた経営管理上の課題、について考察を進めた。 1)については,我が国我が国農業における担い手として,「大規模」家族経営が取り上げられるなど,家族経営の位置づけが必ずしも明確ではないことを明らかにした。2)については,我が国において青年就農者の増加がみられる一方,そのワークライフバランスが必ずしも十分に考慮されていないこと,家族経営協定の普及・啓発に当たっては,新規参入者が中止する短期的な時間管理と中長期的な時間管理を組み合わせることが重要であることを示した。3)については,大規模家族経営が経営発展をめざすにあたり不可欠な外部雇用の導入の際に,規模拡大とコストアップが同時に発生しうること(稲作)や,家畜伝染病の発生が財務に大きな影響を与える事(肉牛)などを明らかにした。 これらのことから,今後の家族農業経営は,大規模化が必然となるものの,日本の農業経営の体質強化に向けて、「企業的家族」あるいは「家族的企業」による農業経営を、内部環境・外部環境に即して育成していくことが求められていることを明らかにした。
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