研究課題
食品の品質を正確に評価するには、風味に関連する化学成分のみならず、食感を決定づける内部構造や物性も合わせて同時に計測すること、さらに、食品が持つ多層構造の各々における品質を、個別にかつ包括的に計測することが重要である。本研究の目的は、空間分解分光法とMulti-wayデータ解析を融合し、対象の任意の層における光吸収・光散乱特性を個別に推定する「空間・層別分解分光法(Soace and Layer Resolved Spectroscopy:SLRS法)」を開発すること、及びその食品内部の成分分布、物性及び内部構造の同時・非破壊計測への応用にある。今年度の研究では、試料の異なる光源-計測点距離における複数のスペクトル、すなわち計測位置、波長、輝度の3軸よりなる空間分解分光スペクトルを計測するシステムを構築した。具体的には、高輝度キセノンランプ、複数のバンドパスフィルタを装着可能なフィルターホイール、光を一点に集光させるための光学系よりなる分光光源と、試料の複数点における輝度値を同時に計測可能なアレイ検出器を組み合わせ、両者を連動させて制御するアプリケーションを開発した。また、食パンを試料に空間分解分光スペクトルの計測を試み、照明の集光点から任意の距離の、任意の波長における輝度値、すなわち空間分解分光スペクトルを計測可能なことを確認した。本システムは紫外から近赤外領域における幅広い波長帯で計測可能なことが特徴であり、従来は可視領域に限定されていた空間分解分光スペクトル計測にブレークスルーをもたらすと期待される。また、リンゴの空間分解分光スペクトルをモデルデータに、Multi-wayデータ解析法による層別のスペクトル分離を試み、リンゴの皮と果実のスペクトルを分離可能なことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、分光光源及びアレイ検出器を組み合わせた空間分解分光システムを構築した。
当初の計画通り、モデル試料の空間分解分光スペクトル計測と、その層別分離アルゴリズムの構築に取り組む。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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