食品の品質を正確に評価するには、風味に関連する化学成分のみならず、食感を決定づける内部構造や物性も合わせて同時に計測すること、さらに、食品が持つ多層構造の各々における品質を、個別にかつ包括的に計測することが重要である。本研究の目的は、空間分解分光法とMulti-wayデータ解析を融合し、対象の任意の層における光吸収・光散乱特性を個別に推定する「空間・層別分解分光法(Space and Layer Resolved Spectroscopy: SLRS法)」を開発すること、及びその食品内部の成分分布、物性及び内部構造の同時・非破壊計測への応用にある。 今年度は、前年度に構築した空間分解分光スペクトル(Spatially Resolved Spectra: SRS)計測システムを用い、二層の樹脂よりなるモデル試料を計測した。具体的には、SRSシステムに1200-1650 nmの範囲で9枚のバンドパスフィルタを装着し、ABS樹脂シートの上にスチレン樹脂シートを積層したモデル試料を実験に供試した。モデル試料に用いた樹脂シートの厚みはそれぞれ0.3 mmであり、モデル試料全体の厚みを15 mm(シート50枚)とした上で、積層するスチレン樹脂シートの枚数を0-50枚まで変えつつSRSスペクトルを計測した。得られたデータにParallel Factor Analysis (PARAFAC)を適用したところ、ABS樹脂とスチレン樹脂のスペクトルを分離可能であった。また、Partial Least Squares (PLS)回帰により、積層したスチレン樹脂の厚みを、SRSスペクトルから推定可能であることが分かった。
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