本年度は、これまでに構築した計測システム及び解析アルゴリズムを用いて、実際の農産物計測を試みた。試料には市販のアーウィンマンゴーを用い、1日に1回、4日間にわたって果実表面の空間分解分光スペクトルを計測した。空間分解分光スペクトル計測には、キセノンランプ光源(東京インスツルメンツ製SP99-OAP-SYS)、液晶チューナブルフィルタ(CRI社製Varispec VIS)及びモノクロCMOSカメラ(浜松ホトニクス製ORCA Flash 2.8)よりなるシステムを用いた。光源に光ファイバを接続し、その先端に結像レンズを装着して、試料表面上に直径約1 mmのスポット照明を行った。液晶チューナブルフィルタの透過波長を500-720 nmの範囲切り替え、各波長において画像を取得した。得られた各波長の画像に画像解析を適用し、波長、距離及び吸光度からなる空間分解分光スペクトル(Spatially Resolved Spectra: SRS)を得た。Parallel factor analysis (PARAFAC)により、空間分解分光スペクトルを2因子のスコア、波長ローディング及び距離ローディングに分解した。また、SRS計測を行った点の果肉硬度を、打音式硬度計(東洋精機製作所製ファームテスタ)により計測した。その結果、550 nm付近に色素成分によると見られる顕著な吸収ピークが観察された。また、果皮を除去して実測した果肉のスペクトルと第2ローディングの形状がほぼ一致していることから、第1因子が果皮、第2因子が果肉のスペクトルに対応していると考えられた。一方、第1因子得点、第2因子得点と果肉硬度の指標値には相関が見られなかった。
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