研究課題/領域番号 |
23688032
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
福田 健二 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80419217)
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キーワード | ミルク / odorant-binding protein / リポカリン / フェロモン / モノクローナル抗体 / ウエスタンブロッティング / リアルタイムPCR / CxxxCモチーフ |
研究概要 |
乳は栄養供給、免疫賦与、感染防御などの機能を有する哺乳類特有の分泌物であり、その摂取は新生仔の健全な発育に必須である。ウシ初乳に新奇に見出されたリポカリン(bcOBP)の生理機能を探るため、平成23年度はその発現器官と体内分布の解明を目指した。ウエスタンブロット解析を実施した結果、泌乳期の雌ウシ(Friesian-Holstein)の初乳、常乳、唾液、鼻粘液、羊水、膣分泌液、血漿に陽性バンドを検出したが、涙、汗、尿では検出限界未満であった。また、分布パターンに個体間差はなかった(n=3)。分娩直後に採集した初乳中のbcOBP濃度は181±39μg/Lと見積もられ、全乳中の濃度は分娩後少なくとも10日まで一定であった。乳以外の各種体液中の濃度は、乳と同程度か、より少ないと推定された。血漿中のbcOBP濃度は分娩日に最も高く、分娩後20日では有意に低下した。TaqManプローブによるリアルタイムPCRを実施した結果、涙腺、乳腺組織、耳下腺、扁桃腺、気道上皮組織、鼻粘膜組織、嗅覚上皮、鋤鼻器官、子宮内膜組織、膣粘膜組織、リンパ節やその他臓器に幅広くbcOBPのmRNA発現が認められた。発現量が最も高かったのは涙腺であり、その他組織における発現量は涙腺の10-3~10-6程度であった。また、個体間における差異も認められた(n=1~3)。各種組織切片を用いたin situハイブリダイゼーションの結果も、幅広い組織でのmRNA発現を支持した。ブタ乳に性フェロモン結合タンパク質として見出されたOBPの分布パターンがbcOBPとよく似ていること、また、フェロモン結合性タンパク質として知られるAphrodisinやProbasinに保存されるアミノ酸配列(CxxxCモチーフ)をbcOBPが有することから、乳中のbcOBPはフェロモンの結合・運搬に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雌ウシ各種体液中のbcOBP分布パターンをタンパク質レベルで明らかし、各種組織での発現をmRNAレベルで明らかにした。本タンパク質が分泌型であることからmRNA発現を指標に発現器官の特定を試みたが、予想以上に幅広い組織に発現が認められたため、さらに詳細な細胞レベルでの発現を特定するには至っていない。また、血液中にbcOBPが存在し、かつ乳腺組織でmRNA発現が認められたことから、乳中bcOBPの由来(血液由来ないし乳腺組織由来)を明確に示すには至らなかった。以上の理由から達成度を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目標は乳由来bcOBPの生理機能の解明である。分布パターンの解析から、幅広い組織での発現が新知見として得られ、bcOBPが各組織で担う役割にも興味が広がるが、本来の目標に焦点を絞って研究を進める。すなわち、平成23年度で未解決の細胞レベルでの発現部位の特定および乳中bcOBPの由来の解明について保留する。平成24年度は従来の研究計画に従い、bcOBPのリガンド結合特異性の解析ならびに天然リガンドの同定を実施する。
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