研究概要 |
ウシ初乳に新奇に見出されたリポカリン(bcOBP)の生理機能を探るため,平成24年度はbcOBPのリガンド結合特異性の解析ならびに天然リガンドの同定を目指した. (1) リガンド結合特異性の解析 比較対象としてウシ鼻粘膜由来OBP(bOBP)組換え体をPCRクローニングにより作製し,これを使用した.bcOBP組換え体は蛍光基質1-aminoanthracene(1-AMA)を結合しないが4,4’-dianilino-1,1’-binaphthyl-5,5’-disulfonic acid dipotassium salt (bis-ANS)を結合することが示されたため,bis-ANSの結合阻害を指標としたリガンド特異性評価系を構築した.脂肪族化合物,芳香族化合物,複素環化合物,テルペノイドなど種々の疎水性低分子化合物に対する解離定数を求めた結果,bOBP及びbcOBPともにマイクロモルからミリモルの範囲で幅広くリガンドを結合し,両者の特異性スペクトルに明瞭な相違は認められなかった.野生型bcOBPは十分な精製量が得られず,リガンド結合特異性の解析には至らなかった. (2) 天然リガンドの同定 抗bcOBPモノクローナル抗体固定化カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーならびにToyopearl HW-55Fを用いたゲルろ過による野生型bcOBPの精製法を確立した.10リットルのウシ常乳から酸沈殿によりカゼインを除去し,残りのホエイ画分から野生型bcOBPの精製標品0.5mgを得た.これを異なるpH,温度,還元剤濃度で処理し,遊離した揮発性化合物を捕集しGC-MSによる解析を試みたが,現在のところ同定には至っていない.
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