研究課題/領域番号 |
23688033
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉野 利久 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (90363035)
|
研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
|
キーワード | 代謝性ホルモン / 乳牛 / グレリン / GLP-1 / メタボロミクス / 感受性マーカー |
研究概要 |
本研究では,周産期ホメオレシスの代謝調節に重要なインスリン・GH,および末梢性食欲調節因子であるGLP-1・グレリンに焦点を絞りメタボロミクス解析を行い,栄養代謝調節因子である代謝性ホルモンの感受性をバイオマーカーで検知することによって,乳牛の栄養状態や潜在性疾病を的確かつ簡易的に把握することを目的とする。本年度は,育成牛を用いて,グレリンおよびGLP-1の感作試験を行い,感作後の肝臓および血液における代謝産物の変動解析を実施した。 試験には,ホルスタイン種去勢牛3頭(平均体重400kg)用いた。試験は,頸静脈より生理食塩水を投与する対照区,0.5μg/kg・BWのグレリンを投与するグレリン区,および同容量のGLP-1を投与するGLP-1区の計3処理区を設け,3×3ラテン方格法で実施した。各溶液投与後30分に,採血および生検針を用いて肝臓組織片を採取し,メタボローム解析を行った。メタボローム解析はキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)を用いて実施した。 結果,肝臓では203,血漿では137の代謝産物が検出された。グレリン区は対照区と比べ,代謝産物の変動に違いは認められなかった。GLP-1区は対照区と比べ,肝臓では,Glucose 1-phosphate,Glucose 1-phosphate,Fructose 6-phosphateなどが低値を示し解糖/糖新生経路の抑制が見られた。また,同様にペントースリン酸経路も抑制されていた。それに伴い,ATP,ADP,GTP,GDPなどの高リン酸化合物は,対照区と比較し高値を示し,血中のATP濃度の増加も認められた。以上のことから,GLP-1は,肝臓において,糖新生を抑制し,エネルギー基質の産生を促進する一方で,エネルギー利用を抑制する作用を有するかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度開始当初に予定した研究計画は終了し,ある程度の成果も出ており,おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,平成24年度で明らかとなったGLP-1の肝臓での作用に関して,詳細に検討するとともに,GLP-1や肝臓糖新生等の感受性バイオマーカーの探索を実施する。また,解析は外注することにより,研究の迅速な推進に努める。
|