研究課題
2012年度の結果から,ヒツジへのGLP-1投与により,肝臓での解糖/糖新生経路,ペントースリン酸経路の抑制が見られ,それに伴うATPなどの高リン酸化合物の増加が認められた。以上のことから,GLP-1は,肝臓において糖新生を抑制しエネルギー基質の産生を促進する一方で,エネルギー利用を抑制する作用を有する可能性が考えられた。GLP-1はインスリン分泌を促進することから,得られた結果には,インスリンの関与も考えられた。そこで本年度は,インスリンとGLP-1の肝臓での作用および血漿代謝産物との関連性を詳細に検討した。試験にはサフォーク種去勢ヒツジ4頭を用い、ユーグリセミッククランプを実施した。インスリン注入開始時を0分とし、注入開始60分後にGLP-1注入を開始した。GLP-1注入開始30分後にインスリン注入を止め、その後60分間はGLP-1のみを注入した。血糖値維持のために20%グルコース溶液を可変的に注入した。肝バイオプシーは、インスリン注入開始から0分(対照)、60分後(インスリン)、GLP-1注入開始30分後(インスリン+GLP-1)、90分後(GLP-1)の計4回実施し、肝臓組織片を採取した。得られた肝臓組織片採取をキャピラリー電気泳動/飛行時間型質量分析を用いたメタボローム解析に供した。メタボローム解析によって検出された代謝産物(246物質)を,直交部分最小二乗法を用い因子負荷量0.8以上の代謝産物40物質を選抜した。解糖系、糖新生経路、ペントースリン酸経路、TCA回路、ピリミジン代謝、プリン代謝に関わる代謝物およびグルタミン酸はインスリン注入により減少したが、GLP-1注入により増加した。GLP-1注入はバリン、ロイシン、イソロイシン、BHBA、リジン代謝産物、メチオニン代謝産物を増加させたが、インスリン注入による影響は見られなかった。以上のことから、肝臓の代謝反応ではGLP-1はインスリンとは逆の作用を示す可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度開始当初に予定した研究計画は終了し,GLP-1の反芻動物における新知見も得ており,おおむね順調に進展していると言える。
今後は,平成25年度で明らかとなったGLP-1の肝臓での作用に関して詳細に検討する。また,解析は外部委託等により実施することで,研究の迅速な推進に努める。
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