研究課題/領域番号 |
23688035
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清川 泰志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70554484)
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キーワード | 警報フェロモン / 安寧フェロモン / 揮発性分子 / 聴覚性驚愕反応 / Tenax / 恐怖条件づけ / すくみ行動 / 扁桃体 |
研究概要 |
本年度に得られた主要な成果は以下の通りである 1.警報フェロモン候補分子の絞り込み及び同定 これまでの研究により確立した方法を用いて警報フェロモンを多数匹のドナーラットから放出させ、それを吸着剤(Tenax)に捕捉し、試料の分画を繰り返していったところ、ある1つの画分にのみフェロモン活性が認められることが明らかとなった。この画分に含まれる物質を解析したところ、警報フェロモンを含むサンプルには特定の2物質が含まれていることが判明した。そのためこの2物質を合成することでそれぞれ入手し、フェロモン含有試料に存在するのと同比率で混合したところ、混合サンプルにフェロモン活性が認められた。現在は、2物質の混合比率がフェロモン活性に与える影響を検討するとともに、その受容における鋤鼻系の役割や、その作用を薬理学的に検討することで、混合サンプルが警報フェロモン分子であるかを検証している。 2.安寧フェロモン解析に向けた実験系の整備 安寧フェロモンを解析するには、これまでパートナーラットを提示することで得られた効果が、パートナー由来の匂い物質のみを提示することで得られる必要がある。そのためパートナーラットをあらかじめ導入した実験箱を作製することでパートナーラット由来の匂い物質のみを被験動物に提示し、その効果を検討した結果、パートナーラット由来の匂い物質はパートナーラットと同等の効果があることが判明し、安寧フェロモンを実験箱内存在することが明らかとなった。現在は、安寧フェロモンの揮発性を検討するとともに、安寧フェロモンを捕捉する吸着剤を選定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
警報フェロモン同定に向けてフェロモン含有試料を分析することで2つの候補物質を同定することができ、またこの2つの候補物質を混合することでフェロモン活性をもつ混合サンプルを作製することができたことから、警報フェロモン分子の有力候補を同定することができたと考えられるため。また安寧フェロモンに関しても、今後のフェロモン分子同定に向けて安寧フェロモンを実験箱内にとどめ置くことが可能になったため。
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今後の研究の推進方策 |
警報フェロモンに関しては、2つの物質の混合比率がフェロモン活性に与える影響を検討するとともに、その受容における鋤鼻系の役割や、その作用を薬理学的に検討することで、混合サンプルが警報フェロモン分子であるかを検証する。またフェロモン効果の脳内神経メカニズム解明に向けて、不安に関連すると報告されている分界条床核の役割を検討する。 安寧フェロモンに関しては、今後の分析機器を決定するため安寧フェロモンが揮発性物質であるのか不揮発性物質であるのかを検討するとともに、フェロモンの吸着剤を選定する。またフェロモン効果の神経メカニズムを解明するため、これまでの研究結果より想定される神経回路をより詳細に検討していく。
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