研究課題
本研究の目的は、アレルギー性疾患の病態制御メカニズムにおけるサーカディアンリズムの役割を分子レベルから解明し、得られた研究成果に基づいて、時間薬理学の概念を応用した新しいアレルギー治療戦略を構築することである。本年度は、前年度に引き続きアトピー性皮膚炎自然発症動物モデルであるNC/Tndマウスおよびイヌを用いて以下の実験を行った。1.NC/Tndマウスの引っ掻き行動におけるサーカディアンリズム解析マウスの活動性と引っ掻き行動の関係を解析した結果、1日のうちマウスの活動性が低下した時間帯にマウスの引っ掻き行動が増加し、マウスの活動性が増加した時間帯にマウスの引っ掻き行動が低下していた。また、皮膚バリア機能の指標である経皮水分蒸散量(TEWL)についてもサーカディアンリズムが認められ、マウス引っ掻き行動との関連性が認められた。2.イヌにおけるサーカディアンリズム解析前年度に特定したイヌ末梢血単核球において24時間周期のリズムを刻むマーカー時計遺伝子であるPer1遺伝子について、その発現制御メカニズムを解析した。健常犬においては内因性グルココルチコイドであるコルチゾールがサーカディアンリズムを示し、午前9時に最高値を示し、午後から夜間において低下していた。イヌ末梢血単核球をデキサメタゾンで刺激し時計遺伝子の発現を解析すると、Per1遺伝子の発現が特異的に増加していた。Per1遺伝子の発現は、デキサメタゾンの濃度および刺激時間依存的に増加し、刺激後4時間で最大の遺伝子発現が認められた。本研究結果から、イヌ末梢血単核球におけるPer1遺伝子の発現が、グルココルチコイドにより制御されていることが示唆された。時計遺伝子は免疫機能にも深く関与していることから、グルココルチコイドによる時計遺伝子発現の制御が免疫機能に何らかの役割を果たしている可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、マウスおよびイヌを用いて、アレルギー制御メカニズムにおけるサーカディアンリズムの役割について解析できている。
NC/Tndマウスを用いて、アトピー性皮膚炎の痒みに伴う引っ掻き行動において、サーカディアンリズムを制御している液性因子および分子メカニズムをさらに解明していく。また、イヌを用いて、アレルギー関連因子のサーカディアンリズム、および抗アレルギー薬や免疫抑制剤の時計遺伝子に及ぼす影響について解析していく。これら動物モデルを用いた研究により、アレルギー制御メカニズムにおけるサーカディアンリズムの役割を明らかにし、治療標的となる分子をさらに詳細に解析し選別していく予定である。
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