研究課題/領域番号 |
23688041
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90526526)
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キーワード | 木材腐朽菌 / 微生物間相互作用 / ヘルパー細菌 / 白色腐朽菌 / 複合微生物系 |
研究概要 |
腐朽木材中における木材腐朽菌と細菌との相互作用を明らかにするために、木材腐朽菌と共存する細菌との対峙培養が,木材腐朽菌の菌糸伸張へ与える影響を調べるとともに、木粉培地中での共培養による木材腐朽への影響を検討した。白色腐朽菌Sterum sp. TN-4Fと腐朽材から分離された細菌Curtobacterium sp. TN4W-19をPDA培地上で対峙培養することで、腐朽菌の菌糸伸張が促進される現象が示され、腐朽菌へ正の影響を与える細菌の存在が明らかとなった。他の木材腐朽菌であるTN-3F、TN-6FおよびTN-9Fの菌糸体と、それぞれの腐朽材より分離された細菌とをPDA培地上で対峙培養し、腐朽菌の菌糸伸張速度を計測した。腐朽菌TN-3Fと27株の共存細菌(TN3W-1~27)との組み合わせの結果、腐朽菌の菌糸伸張を促進したものが8株、抑制したものは14株存在した。腐朽菌TN-6Fと44株の共存細菌(TN6W-1~44)と組み合わせた結果、促進したものは3株、抑制したものは20株存在じた。腐朽菌TN-9Fと27株の共存細菌(TNgW-1~27)とを組み合わせた結果、促進したものは2株、抑制したものは3株であった。この結果から、腐朽木材中には腐朽菌の生育に影響を及ぼす細菌が広く存在することが示唆された。木材腐朽菌株の種を調べたところ、TN3-Fは白色腐朽菌乃Phlebia breviporaと5.8S rDNA配列が99%一致した。また、TN6Fは子実体の形状から白色腐朽菌Trametes versicoloと考えられた。いずれの腐朽菌も環境汚染物質分解能に優れている報告があることから、今回分離された複数細菌株との複合微生物系構築により環境浄化への応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、木材腐朽菌の生育や木材腐朽活性に影響を与える細菌はそれほど多くないと予測していたが、本研究初年度の網羅的な解析の結果、数多くの細菌が木材腐朽菌に影響を与えることが判明し、多様な生理的影響を与えることが明らかになり、研究対象が大きく広がってきたから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、木材腐朽時における細菌の役割を解明することを最重要課題として取り組む。この際に、腐朽に伴う木材の化学組成変化だけでなく、電子顕微鏡レベルで細菌と腐朽菌の共存形態を明らかにする。また、腐朽菌と細菌共存下で、どのような物質を解して影響を与え合っているのかを解明するために、GC/MSによるに二次代謝物の網羅的解析を行う。さらに、副次的な研究成果として子実体形成など、対象とする表現型が増える傾向にあり、この点に対応する必要がある。
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