研究課題/領域番号 |
23688041
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90526526)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 白色腐朽菌 / リグニン / 微生物間相互作用 |
研究概要 |
寒天培地上での担子菌生育ヘルパー細菌探索を進め、Phlebia brevisporaおよびTrametes versicolorと、それぞれの担子菌と共存していた細菌との共培養で、菌糸伸長の促進効果を示す細菌種が見出された。それぞれの担子菌は環境汚染物質の分解能に優れ、リグニン分解酵素の情報が豊富であり、ゲノム情報も充実している。したがって、十分なバックグラウンドを保持した研究モデルの構築ができた。それぞれの細菌と木材腐朽菌を木粉倍地上で共培養すると、木粉の重量減少および主成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)の含有量が、木材腐朽菌単独による変化と異なる現象を見出した。これら共培養している状態を電子顕微鏡を用いて観察したが、固定化の過程で木粉上の細菌を保持することが難しく、さらなる条件検討が必要となった。また、木粉中の細菌量を測定するために、バッファー抽出を行い、PFUによる計測を試みたが、細菌株の木粉への吸着が強固なため、測定が困難であった。以上の結果より、木粉の腐朽過程における細菌の影響を評価するためには、まず、細菌量のモニタリングが重要であり、PLFA法の適用が必要であるとの結論に至った。一方で、寒天培地上での細菌による木材腐朽菌の菌糸伸長促進効果については、培地中のグルコース濃度を変化させることで、その効果をドラスティックに変化させることが示された。この成果は、細菌株が生産していると推測される木材腐朽菌の菌糸伸長促進物質の検索を行うために、足がかりとなる重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白色腐朽菌株と細菌株の相互作用および共培養の効果について、木粉の腐朽への効果が再現よく得られている。また、対象となる白色腐朽菌がPhlebia brevisporaとTrametes versicolorの2菌株に絞り込めたことは、いずれもゲノム情報のバックグラウンドや、環境汚染物質分解能の情報が充実している白色腐朽菌株であるため、今後の研究推進に対して大きな成果であると考えられる。また、寒天培地上での挙動についても、促進効果の限定要因がグルコースであることを突き止めたことは、白色腐朽菌・細菌間のコミュニケーション物質を探索するうえで有利な進展といえる。一方で、「共培養中に何が起こっているのか?」の問いに答えるために、電子顕微鏡を用いた可視化と、一般的な細菌数計測法を用いたアプローチを試みたが、手法的に困難であり、異なる側面からのアプローチを必要としている。この点についてはPLFA法の適用により解決可能であると考えており、全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
白色腐朽菌と細菌との共培養による木材普及への効果については、現象をとらえることができている。本年は、「共培養中に何が起こっているのか?」の問いに答えることが主題となる。この問いに答えるには、共培養中の白色腐朽菌と細菌それぞれの可視化とバイオマス量のモニタリングが必要であるが、条件、手法の検討が重要になる。現在はPLFA法が有効であろうと考え、検討を進めているが、困難な場合はリアルタイムPCRによるDNA定量も視野に入れて検討を進める。微生物間のシグナル物質の探索については、寒天培地上の低分子化合物の微量分析と、細菌の液体培養成分の分画という二つの戦略で検討を進める。いずれもこれまでに蓄積した培養条件の情報が生かされる。さらに、対象とした白色腐朽菌2株については、木材腐朽以外に環境汚染物質の分解能力にも長けているため、この能力に対する細菌共培養影響についても検討を進める。
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