Phlebia brevispora TN3F株と細菌TN3W-14株を寒天培地および液体培地で共培養すると、P. brevispora TN3F株の菌糸伸長および菌糸重量がそれぞれ増加することが示されたため、さらに詳細を検討することとした。難分解性環境汚染物質分解能に優れるP. brevispora TMIC33929株に対しても寒天培地上で菌糸伸長促進が確認され、液体培地では、単独培養と比較して細菌共培養により最大3倍高い菌糸体重量増加を示した。したがってP. brevisporaは菌株によらず同様の成長促進効果が得られると考えられた。また菌糸体の形態変化を詳細に観察したところ、菌体重量変化に差が観察され始める液体培養5日目から、球形ペレット状の菌糸塊が徐々にフィラメント状へと変化し、菌糸が培地内に広く伸展していくことが観察により明らかとなった。菌糸体がフィラメント状に伸展すると、培養液と菌糸との接触面積が増大し、酸素や栄養分が容易に吸収可能となる。また本現象は細菌無細胞培養液でも観察されたため、細菌が作り出す何らかの物質により引き起こされると考えられた。 Stereum sp. TN4F によるPDA寒天培地上に設置した2×6×0.5 cmの木片の腐朽試験を行ったところ、共存細菌Curtobacterium sp. TN4W-19を共培養した際に、単独培養と比較して、圧倒的な菌糸伸長が観察され、木片上においても菌糸伸長の促進が観察された。したがって、細菌の共存は木材腐朽においても重要な役割を果たすことが考えられた。本細菌の組み合わせで前述のような液体培養を行っても、特に共培養の効果は見られなかった。これらのことは糸状菌と細菌との相互作用、その効果と発現メカニズムは多様であり、さらに多くの検討を要することが示された。
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