研究概要 |
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(TEMPO)を用いる酸化反応は,第1級アルコールと第2級アルコールを併せ持つ基質において,第1級アルコール選択的に酸化反応が進行することが知られている.この選択性は,TEMPOの触媒活性部位であるニトロキシルラジカル部を覆う4つのメチル基の嵩高さによって発現するものと考えられている.第1級アルコール選択的酸化反応は,TEMPO酸化に特有の反応であるが,アルコールの酸化と共に水酸基を区別化できることから,多官能基を有する生物活性物質の合成において重要な手法となっている.そのため,TEMPO酸化より高活性で基質適用範囲の広い酸化反応が開発できれば,有用な反応となるはずである. 研究期間の初年度にあたる平成23年度は,これまでに開発したアザアダマンタン型ニトロキシルラジカルをはじめとする高活性ニトロキシルラジカル型酸化触媒に対して適切な立体要求性を触媒に付与することによって,高活性かつ第1級アルコール選択性を有する触媒の開発を行った.その結果,アザノルアダマンタン骨格を持つ新規触媒が,TEMPOよりも高活性かつ第1級アルコール選択性を有する触媒として機能する事を見出した.この触媒は,第1級アルコールが嵩高いネオペンチルアルコール等である場合に,TEMPOに比べその優位性が顕著であった. 本研究の途上で,1,2-ジオールからの一炭素減炭反応を伴うカルボン酸への2種のワンポット酸化的開裂反応を見出した.本手法は,これまで1,2-ジオールからアルデヒドへの酸化反応とアルデヒドからカルボン酸への酸化反応の2工程をかけて行われていた変換を1工程で行えることから合成化学的に重要であるため,基質適用範囲と反応機構について精査した.
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