研究概要 |
本年度は、TAM選択的なDDS開発に関して、in vivoでの検討と癌治療への展開を中心に進めた。colon-26固形がんモデルマウスに対して、マンノース修飾バブルリポソーム/NF-kappaB decoy複合体を腫瘍内投与し、腫瘍部位に超音波照射を行うことで、TAMに対してNF-kappaB decoyを送達させた。その結果、Th1サイトカイン量が増大し、Th2サイトカイン産生量が有意に減少、また、VEGF, MMP-9発現量の減少、NO産生能の亢進が認められ、TAMの表現型の存在比がM1型有意なものへシフトされている可能性が示された。また、TAM選択的にNF-kappaB decoyを導入により、腫瘍増殖抑制効果、ならびに延命効果が認められた。さらに、Ehlrich腹水がんモデルマウスを用いて、マンノース修飾バブルリポソーム/NF-kappaB decoy複合体の腹腔内投与と超音波照射の併用により、がん性腹水中のTAMに対するNF-kappaB decoyの導入を行った。固形腫瘍の場合と同様に、腹腔内における血管新生、がん細胞増殖、腹水貯水が有意に抑制することができ、また、延命効果が得られることが示された。以上、マンノース修飾バブルリポソームと超音波照射の併用によるTAM選択的なDDSの開発に成功し、また、癌治療へ応用できる可能性が示された。一方、新たながん治療に有効な標的指向性キャリアとしてシアリルルイスX修飾リポソームを開発し、ヒト血管内皮細胞株HUVECを用いた培養細胞での検討において、本リポソームがE-セレクチンを介してHUVECと結合することが示された。
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