研究課題/領域番号 |
23689005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生沼 泉 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40452297)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 低分子量Gタンパク質 / 神経細胞 / 成長円錐 / 軸索ガイダンス |
研究概要 |
R-Ras は神経系に限らず、幅広い組織で発現している。また、反発性ガイダンス因子 semaphorin(Sema) は元来、発達期の神経系においての反発因子として働く因子として単離されたが、近年の報告で、Semaが神経系以外を含めた幅広い細胞種で細胞接着や細胞運動を制御していることが相次いでわかってきた。さらに、Semaおよびその受容体 Plexin はガン化した細胞にも発現しており、それらの変異とガンの転移・浸潤能力に相関があることを、以前の研究でわれわれは明らかにしている。さらに、別の反発性ガイダンス因子 ephrin も様々な細胞において R-Ras を不活性化することにより細胞運動の抑制をすることがわかってきた。しかしながら、R-Rasの細胞接着因子刺激による活性化機構や R-Ras によるインテグリン活性化の機構についてはわかっていない。このことからわれわれは、神経系のみならず幅広い細胞種においての、さらに様々なガイダンスシグナルにおいて普遍的に駆動される情報伝達の解明につなげるという狙いで、R-Rasの上流および下流の制御分子研究を行った。海馬や大脳皮質の神経細胞を用いた細胞生物学的・生化学的研究の結果、アクチン細胞骨格足場タンパク質の Afadin および、アクチンanti-capping タンパク質、Ena/VASPのリガンドである Lamellipodin を、R-Ras のエフェクターとして同定し、前者が神経軸索の分枝化、後者が神経軸索の成長円錐の形態制御に関わっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書には、課題として、R-Ras の上流および下流の因子の同定を挙げていたが、研究期間内においては、下流分子の同定は想定以上に進み、Afadin と Lamellipodin という、2つの分子を同定し、論文公表に至った。一方で、上流分子の同定は、研究途上にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず、様々な反発性・誘引性ガイダンス因子刺激を海馬や大脳皮質の神経細胞に刺激したときの神経細胞内在性のR-Ras活性の変化を検証し、様々なガイダンス因子刺激の情報がR-Rasの活性度合いに統合されうるのかを検証する。さらに、R-Rasに対するFRETプローブを用いたライブセルイメージングを行うことで、成長円錐内局所でのR-Rasの時空間的活性変化を検討する。さらに、反発性あるいは誘引性ガイダンス因子刺激によって引き起こされるアクチン細胞骨格系の変化をアクチン結合微小分子、ライフアクトを用いた全反射顕微鏡イメージングによって、観察することで、ガイダンス因子シグナルが軸索形態を変化させるに至るシグナル伝達経路を明らかにしていく。さらに、R-Rasが実際にin vivoでの軸索形態制御に関わっているかを、in utero electroporation法を用いたR-Rasのノックダウンにより検討する。
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