研究概要 |
本研究の目的は、骨細胞の分化制御にかかわる転写因子を同定し、これらの転写因子が担う細胞分化への役割を明らかにすることである。本年度では、昨年度に引き続き、骨細胞分化制御にかかわる候補転写因子のスクリーニングを実施した。さらに、より確実な候補遺伝子の絞り込みを実現するために、骨細胞のダイレクトリプログラミングを検証手段として新たに導入し、この実施に必要不可欠となる実験系の確立に取り組んだ。 第一のスクリーニングとして、マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞のトランスクリプトームデータから、骨芽細胞分化に伴い発現上昇する163個の転写因子(JCI 120, 3455-3465, 2010)のloss of function解析を実施した。さらに、第二のスクリーニングとして、マウス骨組織のトランスクリプトームデータを用いて、骨細胞特異的な遺伝子(Dmp1やSost)と同等な発現パターンを示す転写因子の同定を試みた結果、22個の候補遺伝子の同定に成功した。続いて、22個の転写因子の過剰発現実験を実施するために、レトロウイルス、ならびにレンチウイルスベクターを構築し、ウイルス濃縮液の作製を行った。 骨細胞ダイレクトリプログラミングの新たな実験系を確立するために、骨細胞特異的に蛍光タンパク質を発現するマウスの系統の樹立に着手した。即ち、骨細胞特異的なCre発現系統Dmp1-creと、Rosa遺伝子座に蛍光タンパク質遺伝子TdTomatoがノックインされたマウスの系統Rosa-TdTomatoの交配を実施した。当該マウスから線維芽細胞あるいは頭蓋冠由来の骨芽細胞を単離し、上記候補遺伝子を様々な組み合わせで過剰発現し、蛍光タンパク質TdTomato の発現誘導を指標とすることで、骨細胞分化誘導能の是非が検討可能となる。以上の解析によって、骨細胞の分化誘導に必要かつ十分な転写因子の組み合わせを明らかにする。
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